「老後不安の解消は複利×時間で雪だるま」
なんのこっちゃ?と思わ方もいるかもしれませんね。
まあ複利効果はとにかくすごいって話です。かのアインシュタインも「宇宙最大のパワー」「世界8番目の不思議」と絶賛したとかしないとか(この発言については後ほど)。
でも、お金持ちになる人はだれでもその絶大なパワーを知っています。そのパワーを最大化したのが世界一の投資家ウォーレン・バフェットさん。
老後の不安を解消するにはどうしてもお金が必要です。そのためには複利効果をぜひ知っておかないといけません。本日はそんな複利パワーのお話を僕自身の恥ずかしいエピソードをまじえて勉強していきます。
目次
年金ほしけりゃ68歳まで働け
このブログでも最初に書いた「年金2000万円不足」問題。
この数字にはあまり意味がない、だけど人によってはもっとお金が足らなくなるかも、という話を書きました。

金融庁の審議会があの問題を報告したのは実のところ「年金だけではお金足らなくなるかも知れんから、早いうちに投資始めてちょ。積立NISAなんかオススメ!」という、ある意味NISAのプロパガンダみたいなもんだということを書きました。
panda?

実は年金問題の将来予測で重要なのは、厚生労働省が5年に1度発表する「公的年金の財政検証」の方です。年金の管轄は金融庁ではなく厚労省なので、将来像についての報告はこっちが本命と言えます。
年金の考え方の基礎となる将来の日本の姿や年齢ごとに自分がどれくらいの水準の年金がもらえるのかがまとめられていますので、くわしく知りたい方は読んでみてください。最新の報告書はこちら→『将来の公的年金の財政検証』
「読むのめんどくせー」という人は、以下のニュースポイントを押さえておくといいでしょう。
- 年金支給額が現役世代の平均所得の何%もらえるかを示す所得代替率は現在(2019年時点)65歳の人で61.7%(2019年時点)で、5年前に比べて1ポイント低下。
- この先、経済成長が横ばいで現行の年金制度を続けた場合、現在20歳の人が65歳に到達したときの所得代替率は44.5%にまで低下。
- 現在20歳の人が現在の65歳と同水準(61.7%)の年金を得るには、68歳9か月まで働く必要がある。
財政検証では日本の将来像をⅠ〜Ⅵまで6つのシナリオに分けていますが、この「68歳9か月まで働け!」はシナリオとしては下から2番目の「ケースⅤ」です。
日本の経済成長をある程度見込む「ケースⅢ」の場合は、66歳9か月まで働けば現在の65歳と同水準になるという試算でした。

まあどちらもそう変わりはありません。言わんとしていることは、
今と同じ水準の年金が欲しけりゃ70近くまで働け!
ってことです。それだけ支給開始年齢を遅らせる必要があるってことです。なんか暗〜い気持ちになりますよね。
報告書では、経済成長がマイナス(実質経済成長率▲0.5%)で労働参加も増えない最悪のシナリオ「ケースⅥ」も書かれていて、その場合はなんと、
2052年には年金の積立金が枯渇!
するそうです。
そうなると年金は現役世代の保険料だけでまかなう完全賦課(ふか)方式に移行し、所得代替率は37.6%まで低下すると試算しています。
積立方式と賦課(ふか)方式
現役世代が自分が将来受け取る年金分を働きながら積み立てていくのが積立方式。年金に使われなかった保険料が積立てられ、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が株式と債券投資で運用しています。
一方、現役世代の保険料を積み立てせず、現在老齢の方への年金払いに即充当されるのが賦課方式。日本の公的年金はこの2つを合わせた方式で運営されていますが、積立金が枯渇すれば当然、賦課100%のいわば”自転車操業”状態になります。
夕刊紙にはこの報告書にからめて「年金破綻(はたん)」なんてセンセーショナルな見出しも躍っていましたが、実際は最悪のケースになっても、積み立てが枯渇するだけで、年金自体がなくなるわけじゃありません。
所得代替率が50%を下回る場合、支給年齢を遅らせたり支給額を減額したり、保険料値上げや増税など、なんらかの対策が講じられるはずです。
それでも、物価が上がっていく一方で年金水準は下がっていくことが予想され、将来年金だけでは足らなくなる人がもっと増えていくのは間違いありません。
僕の投資の師匠は常々こう話していました。「年金保険料は今のお年寄りを養うための税金みたいなものとあきらめて、自分の年金は自分で投資して用意するしかありません」と。
お金が加速度的に消えていく恐怖
ここからは個人的な話になるので、興味のない方は飛ばしてください。
僕が20年勤めた新聞社をやめてまもない頃のことです。
僕は病気の母の介護をしながらデイトレやFX、先物取引に手を出したのですが、独学の生兵法のためことごとく失敗し、増やすはずだったわずかな退職金のほとんどを失いました。

これはかなりの誤算でした。記者はまずまず高給であったため、20年間勤めた分の厚生年金と企業年金で老後はなんとかやりくりし、足らない分は退職金を元手に投資で増やしていこうと思っていたからです。
今思うと、僕のしていたことはすべて「投資」ではなく「投機」だったんですけどね。
さらに追い打ちをかけるように、年金保険料だの健康保険料だの住民税だのが無職の身に重くのしかかってきました。
仕事をやめるまで知らなかったんですが、年金保険料って会社が半分(つまり自分が払っているのと同額)出してくれていたんですね。
そうした支払いが、前年(つまり現役記者時代)の年収をベースに計算されて退社翌年に全額のしかかってきたので、投資失敗とあわせてダブルパンチをくらいました。
いま給料明細見て、「くそっ、こんなに税金や社会保障費が取られてる!」と嘆いている人は、退職して最初の年はその倍のお金をとられるつもりでいてください(感覚的に)。
FIREを考えている人も社会保険料や健康保険料や住民税の出費を考えておいたほうがいいです。それだけで早期引退をあきらめる人も出てくるかもしれません。
退職金にもけっこうな所得税がかかります。長年働いたご褒美なんだから全部もらえると思ったら大間違い。税務署は容赦しません。
そんなこんなで、投資はうまくいかず、支払いは容赦無くやってきて、お金が加速度的に減っていきました。あの時期は恐怖でしたね。
自分と資産の「共働き」が大事
そんな、お金が加速度的に減っていく不安マックスなときに知り合ったのが僕の投資師匠でした。師匠は早くから投資を学び、20代にして数億円の資産を投資で築いたツワモノです。
師匠の話を少し聞いただけで、僕は自分がいかにまちがった投資(というか投機)をしてきたかを思い知らされ、以後、彼を投資のメンター(師匠)として仰ぎ見るようになりました。
その師匠に最初に言われたのが、「まずは働くこと」でした。
「いくら投資が大事と言っても投入できる元手がないのではどうにもなりませんよ」と。
正直言って耳が痛かったです。
「資産運用と労働は2つのエンジンです。自分も働き、資産にも働いてもらう’共働き’が大切なんです」と師匠は言いました。
2つのエンジンどころか、底にいくつもの穴があいた小舟で沈没寸前だった身には、その言葉が重く胸に響きました。

働きだしたら見通し明るく
それから僕は、ライターの仕事を積極的にこなしました。母の介護をしながらなので、自分の経験でできる仕事はそれくらいしか思い浮かばなかったわけですが、、、
働き始めると同時に、師匠の投資仲間であるFP(ファイナンシャルプランナー)を紹介してもらい、家計を根本から見直してもらいました。
その結果、月々の固定費を見直すだけでかなりの出費が抑えられ、労働収入と相まって大きな投資余力が生まれました(関連記事は以下)。特に住まいと保険の見直しはマストです。


今思うとこれがほんとに大事でした。「収入ー支出=投資余力」をきちんと把握することで、急に見通しが開けた気がしましたね。
投資についても、師匠の教えを守って、デイトレやFX、先物取引などの「投機」はきっぱりやめ、収入から天引きでインデックスファンドの積立をする一方、残った数百万の預金を元手に小型成長株の中長期投資を始めました。
その後母が亡くなり、わずかに残してくれた遺産も運用にまわしたことで、働き始めて1年ちょっとでウソのようにお金が回るようになりました。それまで逃げていくばかりだったお金が集まってくる感じ。あの感覚は不思議でした。
アベノミクスに乗り遅れるのが遅れたものの、投資を始めてからは加速度的に資産が増えました。途中失敗もあったものの、自分の失敗を見つめ直し、投資講座やオンラインスクールでお金や投資の勉強をきちんとしたことで、世界の投資マネーの流れや企業業績の良しあしがおおまかにつかめるようになったことも大きな武器になりました。
でも、なんといっても一番大きいのは、投資リターンにおける「複利効果」と、その効果をさらに高める「時間」を味方につけたことでした。
複利は宇宙最大のパワー!
さて、前段が長くなりましたが、いよいよ「複利効果×時間」という本題に入りましょう。
まず複利についての定義から。複利っていったいなんでしょう。話題のチャットGPTに聞いてみました。
Q:複利って何?
例えば、100万円を年利5%の銀行に預けた場合、1年後には元本に5万円の利息が加わり、合計105万円になります。2年目は、105万円が元本となり、年利5%の利息が発生します。つまり、2年後には元本に加えて前年に発生した5万2500円の利息が加わり、合計110万2500円になるということです。
このように、複利は利息が加算された元本が次の計算対象となるため、単利と比較して長期間にわたってより多くの利益を生み出すことができます
元本にのみ利息がつくのが単利。投資利回りをもう少しわかりやすく10%と仮定しましょう。この投資先で100万円運用した場合、1年間で100万円の10%、つまり10万円がリターンとして増えます。これが単利です。
この増えたお金をそのまま同じ10%利回りの投資先に置いておいた場合、次の年にはどうなるでしょうか。
2年目の元本は110万円ですから、その10%は11万円。元本に足すと121万円になります。同じように3年目は12.1万円のリターンが上乗せされ、133.1万円となります。
このように、元本にも、金利で増えた利益にも、金利がつくことを複利と言います。これを放っておくと金利が金利を産み続けていくわけです。
投資の世界ではこの複利をしばしば「雪玉(スノーボール)」にたとえます。
雪だるまを作った経験がある方ならわかるかもしれません。しっかり芯をつくった雪玉を雪の上で長く転がすと、その周りに雪がついていって、その玉がどんどん大きくなっていきますよね。あれです。

世界で最も尊敬を集める投資家ウォーレン・バフェット氏は「株式投資の真髄はスノーボールだ」と言いました。ご本人の伝記のタイトルもそのものズバリ「スノーボール」です。

また、天才物理学者のアインシュタインはこの複利効果を「宇宙最強の力だ!」と言ったとか言わないとか。
実のところ出典が見つけられないので、複利についてアインシュタインが正確には何て言ったのか、あるいはそんな発言自体あったのかどうか真実はわかりません。
まあそれだけ顕著な物理学的?数学的?な効用が複利にはあるということなのでしょう。
「複利は世界8番目の不思議だ!」と手紙に書いた説もあり、こんな画像もたくさん出回っています。

訳すと「複利とは世界8番目の不思議だ。これを知る者は儲け、これを知らない者は損をする」って感じでしょうか。ちょっと意訳していますけど。
複利には強大なパワーがあり、それを知る者はその力を使って資産を伸ばします。
逆にこのパワーがマイナスに働くこともある。たとえば金利のバカ高い違法なサラ金とかがそうですね。金利の一部を返すのが精いっぱいになると、借金の額は複利パワーで加速度的にふくらんでいきます。
悪徳金融だけの話にとどまりません。金融機関の窓口で言われるがままに投資信託を購入したら、数年たってもまったく資産が増えないどころか、元本がごっそり減っていた。調べてみたら年間の運営手数料やら為替手数料やらで年5~6%とかそれ以上の暴利だった、なんてことはよくある話。
宇宙最大のパワーは知らない間にマイナスに働かせちゃうととんでもなく損しますからお気を付けを。
2023年5月追記:
『バフェットとソロス 勝利の投資学』(マーク・ティアー著、ダイヤモンド社)の第8章の最初に、エピグラフとしてアインシュタインとロスチャイルドの言葉が紹介されていました。
「宇宙で一番力強い力は何かって?そりゃ金利の複利効果だよ」ーーアルバート・アインシュタイン)
「世界の七不思議が何かは知らないけど、八番目の不思議は知ってるよ。金利の複利効果だ」ーーバロン・ロスチャイルド
複利パワーを活かすのは「時間」だ!
このすごい複利の雪だるまパワーを最大限に引き出すのがほかならぬ「時間」です。
資産を大きくする大事な方程式があります。それがこれ。
資金 × 利回り × 時間
この方程式はぼくがオススメする投資講座で知りました。当たり前のように見えますが、これを忘れて短期で金儲けしようとしているうちは資産は大きく育ちません。
方程式の意味するところは、この要素のどれか1つでも大きければ資産は大きく育つというもの。つまり、たとえ資金や利回りが小さくても、時間(年月)さえあれば複利で魔法のように資金を大きくできるのです。
下のグラフをご覧ください。

これは利回り平均が年9%の投資信託に月々3万円ずつ30年間積み立てていったらどれだけお金が増えるかをシミュレーションしたグラフです。
利回りとは元本に対してどれくらい利が乗るかを示した数字。銀行預金の利息や株式の配当がこれにあたりますが、株や投資信託の場合はこれらに加え、価格そのものも上がっていきます。そうした元本に上乗せされたすべての利益を利回りとして考えます。
上の例でいうと100万円の平均利回りが年9%なので、最初の年は9万円の利益が乗るということです。
元本は3万円×12ヶ月×30年=1080万円です(右のグラフの薄い水色部分)。
これに対して平均利益9%が毎年のった資産は、30年で計5,492万円に増えています。単利であれば年9万円ずつのみ、つまり30年で270万円しか増えないはずですが、複利だとこんなに増えるんですね。元本を引いた利益は約3,400万円(濃い水色部分)。なんと元金の3倍超です!
このグラフを見ても、時間が経つほど資産が加速度的(指数関数的?)に増えているのがおわかりいただけるでしょう。これが利益が利益を生み続ける「複利効果×時間」のパワーです。
え?30年間も年平均9%の利回りがある投資信託なんかあるのかって?そう疑問に思った方は下の記事をお読みください。

投資を始めるならすぐ始めるのが有利
「複利効果×時間」が資産増大の鍵だということは、なかなか投資資金が小さいうちは実感できないかもしれません。
でも「千里の道も一歩から」で、とにかく小さな資金からでもすぐに始めることが肝心です。早く始めれば始めるほど有利。
「そんなこと言っても、投資に回す余裕なんか全然ないよ」と反論が聞こえてきそうですが、そういう方には、この本を読むことをお勧めします。
月3000円でもいいので、とにかく少額で投資を始めてみましょう。
そうすると不思議なもんで、人はもっと投資に回そうという欲が出て、投資余力を生み出す方向に意識が変わります。家計を見直し、無駄をなくし、どんどん投資に回していこうとするのです(そんな実験が行動経済学にもありました)。
以下の記事では、2人の大富豪の蓄財術を紹介しましたが、どちらも若い頃からかなり倹約に努め、投資余力を生み出していってます。


そして個人資産が最高で840億ドル(日本円で9兆円ほど)にもなり、世界長者番付トップ10の常連でもあるわれらがバフェットさんも、実は大半の資産が60歳をすぎてから急速に増えたものなのです。
彼はその投資家人生を通して平均すると年率20%超のリターンをたたき出しています。この数字はそんなにすごいようには見えないかもしれません。実際、短期でならもっとすごい成績を出している投資家は大勢います。
でもバフェットさんがすごいのは、その投資成績を半世紀以上にもわたって続けていることなのです。この複利効果がいかにすごいものか、下のバフェットさんの資産グラフを見れば一目瞭然でしょう。

まあバフェットさんほどの成功はわれわれにはまったく必要ないんですが、投資は早く始めれば始めるほど、時間が大きな武器になるということです。資産形成で一番大事なのは、この「複利×時間」を味方につけることなのです。

【まとめ】時間を味方につけて雪玉をころがせ!
僕は投資が禁じられている仕事についていたため、若くして投資を始めることはできませんでした。しかも、早期で退職してから自己流でFXや先物に手を出して大失敗しました。
それは、短期で結果を求めようとする「投機」でしかなく、「複利×時間」を味方に長期で資産をつくっていく「本当の投資」の目線がなかったせいです。
たった1年で退職金をほぼすべて失いましたが、もっと大きかったのは、時間を1年分失ったことだと後になって気づきました。
いくらまとまったお金を手にしても、お金や投資の知識がなければこの「複利×時間」の掛け算はまったく役に立たないのです。
ちなみに僕の投資師匠は、先に挙げた資産作りの方程式「資金×利回り×時間」について、こんなことを語っていました。
「本当の方程式は、資金 × 利回り × 時間 × 知識 です。知識を深めることでさらに雪玉を大きくできますが、知識0なら結果も0です。日々投資の勉強を続けていくことで、資産は掛け算で大きく増えていくのです」
本日の結論!
1日も早く投資を始め、知識に基づく確かな雪玉の核をつくり、それをできるだけ長くころがして複利パワーで雪だるまを大きくする。
悠長に見えるかもしれませんが、これが資産を爆増させる唯一のヒケツです。
というわけで今日の勉強はここまで!
- 労働と家計見直しで投資余力を捻出する
- 投資の勉強をしつつ一刻も早く投資を始める
- 人類最大の発見「複利効果」のパワーを知る
- 複利効果は「時間」によって最大化する
- 方程式は 資金 × 利回り × 時間 × 知識