今日のテーマは、「複利効果と時間で雪だるま」です。
なんのこっちゃ?と思わ方もいるかもしれませんね。
複利効果についてはかのアインシュタインも「人類最大の発見」と絶賛するほど。
お金持ちになる人はだれでも知っているその絶大なるパワー、そしてそのパワーを最大化する「時間」の効用について、本日は勉強していきましょう。
目次
年金ほしけりゃ68歳まで働け
このブログで最初に書いた「年金2000万円不足」問題。
この数字にはあまり意味がない、だけど人によってはもっとお金が足らなくなるかも、という話を書きました。

あの審議会の報告書は「年金だとお金足らなくなるかも知れんから、早いうちに投資始めてちょ。積立NISAなんかオススメ!」という、ある意味金融庁のプロパガンダみたいなもんでした。
panda?

実は年金問題の将来予測で重要なのは、厚生労働省が5年に1度発表する「公的年金の財政検証」の方です。年金の管轄は金融庁ではなく厚労省なので、将来像についての報告はこっちが本命と言えます。
一番新しいのは2019年8月の『令和元年 将来の公的年金の財政検証』です。
年金の考え方の基礎となる将来の日本の姿や年齢ごとに自分がどれくらいの水準の年金がもらえるのかがまとめられていますので、くわしく知りたい方は読んでみてください。
読むのめんどくせー(笑)という人は、以下のニュースポイントを押さえておくといいでしょう。
- 年金支給額が現役世代の平均所得の何%もらえるかを示す所得代替率は現在(2019年時点)65歳の人で61.7%(2019年時点)で、5年前に比べて1ポイント低下。
- この先、経済成長が横ばいで現行の年金制度を続けた場合、現在20歳の人が65歳に到達したときの所得代替率は44.5%にまで低下。
- 現在20歳の人が現在の65歳と同水準(61.7%)の年金を得るには、68歳9か月まで働く必要がある。
財政検証では日本の将来像をⅠ〜Ⅵまで6つのシナリオに分けていますが、これはシナリオとしては下から2番目の悪いケースⅤです。
経済成長をある程度見込む「ケースⅢ」の場合は、66歳9か月まで働けば現在の65歳と同水準になるという試算でした。

まあどちらもそう変わりはありません。言わんとしていることは、
今と同じ水準の年金が欲しけりゃ70近くまで働け!
ってことです。それだけ支給開始年齢を遅らせる必要があるってことです。なんか暗〜い気持ちになりますよね。
年金破綻? 積立金枯渇??
一方、経済成長がマイナス(実質経済成長率▲0.5%)で労働参加も増えない最悪のシナリオ「ケースⅥ」の場合、
2052年には積立金が枯渇します。
この場合、年金は現役世代の保険料だけでまかなう完全賦課(ふか)方式に移行し、所得代替率は37.6%まで低下すると試算しています。
積立方式と賦課方式
現役世代が自分が将来受け取る年金分を働きながら積み立てていくのが積立方式。年金に使われなかった保険料が積立てられ、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が株式と債券投資で運用しています。
一方、現役世代の保険料が積立されず、現在の老齢の方の年金払いに即充当されるのが賦課方式。日本の公的年金はこの2つを合わせた方式で運営されていますが、積立金が枯渇すれば当然、賦課100%のいわば”自転車操業”状態になります。
夕刊紙には「年金破綻(はたん)」なんてセンセーショナルな見出しも躍っていましたが、積立分が枯渇するというだけで、年金がなくなるわけではもちろんありません。
所得代替率が50%を下回る場合、支給年齢を遅らせたり支給額を減額したり、保険料値上げや増税など、なんらかの対策が講じられるはずです。
ぞーぜーはんたーい

いずれにしても、いまの60%から50%以下に所得代替率は下がるのでしょう。今回の検証に2000万円不足みたいな具体的な数字は出てきませんでしたが、将来年金だけでは足らなくなる人が間違いなく増えていきます。
僕の投資の師匠である鵜尾 廉(うお・れん)氏は常々こう話しています。
「日本の年金制度は世界でワースト2位。年金保険料は今のお年寄りを養うための税金みたいなものとあきらめ、自分の年金は自分で投資して用意するしかありません」
お金が加速度的に消えていく恐怖
ここからは個人的な話になるので、興味のない方は飛ばしてください。
僕が20年勤めた新聞社をやめてまもない頃のことです。
僕は病気の母の介護をしながらデイトレやFX、先物取引をしていたのですが、独学の生兵法のためことごとく失敗し、増やすはずだった退職金のほとんどを失いました。

これはかなりの誤算でした。記者はまずまず高給であったため、20年間勤めた分の厚生年金と企業年金で老後はなんとかやりくりし、足らない分は退職金を元手に投資で増やしていこうと思っていたからです。
さらに追い打ちをかけるように、年金保険料だの健康保険料だの住民税だのが無職の身に重くのしかかってきました。
仕事をやめるまで知らなかったんですが、年金保険料って会社が半分(つまり自分が払っているのと同額)出してくれていたんですね。
そうした支払いが、前年(つまり現役記者時代)の年収をベースに計算されて全額のしかかってくるのだからたまりません。
いま給料明細見て、「くそっ、こんなに取られてる!」と嘆いている人は、退職して最初の年はそれ以上のお金をとられるつもりでいてください(感覚的に)。
FIREを考えている人もこの出費を考えておいたほうがいいです。それだけで早期引退をあきらめる人も出てくるかもしれません。
退職金にもけっこうな所得税がかかります。長年働いたご褒美なんだから全部もらえると思ったら大間違い。税務署は容赦しません。
そんなこんなで、投資はうまくいかず、支払いは容赦無くやってきて、お金が加速度的に減っていきました。あの時期は恐怖でしたね。
人には「セミリタイヤでキリギリス生活ですわ」なんて嘯(うそぶ)いてましたけど、実情は火の車でした。
妖怪火の車

自分と資産の「共働き」が大事
そんなときにインタビューの仕事を通じて知り合ったのが投資メンターの鵜尾氏でした。
鵜尾氏は早くから投資を学び、20代にして数億円の資産を投資で築いたツワモノです。
鵜尾氏の話を少し聞いただけで、僕は自分がいかにまちがった投資をしてきたかを思い知らされ、以後、彼を投資のメンター(師匠)として仰ぎ見るようになりました。
その彼に最初に言われたのが、「まずは働くこと」でした。
「いくら投資が大事と言っても、投入できる元手がないとどうにもなりません」と。
正直言って耳が痛かったです。
「資産運用と労働は2つのエンジンです。自分も働き、資産にも働いてもらう’共働き’が大切なんです」と鵜尾氏は言いました。
2つのエンジンどころか、底に2つも3つも穴があいた小舟に乗って少しずつ沈没していた身には、その言葉が重く胸に響きました。
タスケテ~

働きだしたら見通し明るく
それから僕は、ライターの仕事を積極的にこなしました。
それと同時に、鵜尾氏の投資仲間であるFP(ファイナンシャルプランナー)を紹介してもらい、家計を根本から見直してもらいました。
その結果、月々の固定費を見直すだけでかなりの出費が抑えられ、労働収入と相まって大きな投資余力が生まれました(関連記事は以下)。今思うとこれがほんとに大事でした。


同時に「収入ー支出=投資余力」をきちんと把握することで、急に見通しが開けた気がしましたね。

投資については、鵜尾氏の教えを守ってデイトレやFX、先物取引などの「投機」はきっぱりやめ、収入から天引きで積立にまわす一方、残った預金と母のわずかな遺産を元手に中長期での株式投資を再開しました。
そんなこんなで、働き始めて数か月でウソのようにお金が回るようになっていきました。それまで逃げていっていたお金が集まってくる感じ。あの感覚は不思議でしたね。
自分の失敗を見つめ直し、オンラインで投資や金融・経済の勉強も始め、企業業績の見方や世界のお金の流れがおおまかにつかめるようになったことは大きな武器になりました。
でも一番大きかったのは、投資リターンにおける「複利効果」と、その効果をさらに高める「時間」を味方につけたことでした。
そして、ある程度のお金ができてからは、その2つが相まって加速度的に資産が増えていった気がします。
複利は人類最大の発明
さて、前段が長くなりましたが、いよいよ「複利効果×時間」という本題に入りましょう。
まず複利について。複利っていったいなんでしょう。
元本にのみ利息がつくのが単利。100万円を利回り10%の投資で運用した場合、1年間で10万円がリターンとして増えます。これが単利です。
この増えたお金をそのまま同じ利回りの投資先に置いていた場合、次の年にはどうなるでしょうか。
2年目の元本は110万円。その10%は11万円ですから、足すと121万円となります。同じように3年目は12.1万円のリターンが上乗せされ、133.1万円となります。
このように、「元本+利回り」の合計に利息がつくことを複利と言います。利息が利息を産み、翌年にはその利息と元利の合算にさらに利息がつくイメージです。
投資の世界ではこの複利をしばしば「雪玉(スノーボール)」にたとえます。
雪だるまを作った経験があるかたはわかるかもしれません。しっかり芯をつくった雪玉を雪の上で長く転がすと、その周りに雪がついていって、その玉がどんどん大きくなっていく。あれです。

世界で最も尊敬を集める投資家ウォーレン・バフェット氏は「株式投資の真髄はスノーボールだ」と言いました。ご本人の伝記のタイトルもそのものズバリ「スノーボール」です。

また、天才物理学者のアインシュタインはこの複利効果を
人類史上最大の発見だ!

と称しました。それだけ顕著な数学的効用が複利にはあるのです。
ちなみに『バフェットとソロス 勝利の投資学』(マーク・ティアー著、ダイヤモンド社)には、アインシュタインとともに、巨大財閥の当主ロスチャイルドの言葉も紹介されています。
「世界の七不思議が何かは知らないけど、八番目の不思議は知ってるよ。金利の複利効果だ」
資産増大の方程式がある
このすごい複利の雪玉パワーを最大限に引き出すのがほかならぬ時間です。
資産をつくる大事な方程式があります。それがこれ。
資金 × 利回り × 時間
この方程式はぜひ頭に叩き込んでおくべきでしょう。
たとえ資金や利回りが小さくても、時間(年月)さえあれば複利で魔法のように資金を大きくできるという方程式です。
下のグラフをご覧ください。

これは利回りの平均が9%の投資信託に月々3万円ずつ30年間積み立てていったらどれだけお金が増えるかをシミュレーションしたグラフです。
元本は3万円×12ヶ月×30年=1080万円(右のグラフの水色部分)。
それに対してリターンは約3,400万円となり、合計は5,492万円(青い部分)。なんと元金の5倍に増えます。
左下のグラフを見ても、時間が経つほど資産が加速度的(二次関数的?)に増えているのがおわかりいただけるでしょう。これが複利効果×時間のパワーです。
投資を始めるなら若いほど有利
「複利効果×時間」が資産増大の鍵だということは、なかなか投資資金が小さいうちは実感できないかもしれません。
でも、「千里の道も一歩から」で、とにかく小さな資金でも早く始めることが肝心です。投資は早く始めれば始めるほど有利なのです。
「そんなこと言っても、投資に回す余裕なんか全然ないよ」と若い人の反論が聞こえてきそうですが、それは本当ですか?
そういう方には、この本をお勧めします。
月3000円からでもいいから投資を始めてみてください。少額でも始めてみることで意識が変わってきます。
すると不思議なもんで、投資余力を生み出す方向に人は変わっていきます。家計を見直し、無駄をなくして、どんどん投資に回していこうとするんです。不思議なことに。
以下の記事では、2人の大富豪の蓄財術を紹介しましたが、どちらも若い頃からかなり倹約に努め、投資余力を生み出していってます。


若ければ若いほど残された時間が投資には大きな武器になります。資産形成で一番大事なのは、まず時間を味方につけることです。

まとめ 時間を味方につけて雪玉をころがせ!
僕は投資というものが禁じられている仕事についていたため、若くして始められませんでした。しかも、退職してからは自己流でデイトレやFXを始めてしまい、大失敗しました。
それは、短期で結果を求める「投機」でしかなく、時間を使って長期で資産をつくっていく「本当の投資」の目線がなかったせいです。
たった1年で退職金をほぼすべて失いましたが、もっと大きかったのは、時間を1年分失ったことだと後になって気づきました。
単に複利効果と時間があればいいということではなく、投資の知識も増やしていかないと、この掛け算を台無しにしてしまうんですね。
ちなみに投資メンターの鵜尾氏はこの資産作りの「資金×利回り×時間」について、こんなことを語っていました。
「本当は、資金 × 利回り × 時間 × 知識 です。知識を深めることでさらに雪玉を大きくできますが、知識0なら結果も0です。自分で投資判断できず、だまされて終わりです。しかし日々投資の勉強を続けていくことで、資産は掛け算効果で大きく増えていきます」
まとめると、
家計を見直し、一生懸命働いて元手を用意し、勉強をして1日でも早く投資を始めること!
これが複利効果×時間を最大限に生かして雪玉を大きくしていく確実な方法です。
悠長なように見えますが、実はそれが資産形成の一番の早道であると僕は確信しています。
そろそろ働くか、、、

- 労働と家計見直しで投資余力を捻出する
- 投資の勉強をしつつ一刻も早く投資を始める
- 人類最大の発見「複利効果」のパワーを知る
- 複利効果は「時間」によって最大化する
- 方程式は 資金 × 利回り × 時間 × 知識