今日は米国投資の基礎知識として欠くことのできない「セクター分類」について勉強していきます。
セクターとは簡単にいうと産業分類のこと。米国株は産業の種類によって大きく11のセクターに分類されています。
このセクター分類を知らずに米国株投資をしている人が多いですが、それはちょっともったいないことです。
なぜなら、セクターの種類とその動きを知ることで相場観が養われ、投資判断のレベルが格段に上がるからです。
一例を挙げれば、株式には景気循環や金融政策の変化によって追い風となるセクターと向かい風となるセクターがあり、これを「セクターローテーション」と呼びます。
これを知るだけでも今買うべき株や買ってはいけない株が判断でき、また代表的なETF(上場投信)を通してセクターごと取引することも可能です。
本記事ではこうしたセクター分類とそれに関連する知識をまとめました。内容としては、
- 米国株の分類は全11セクター
- 代表的なセクターETF一覧
- S&P500ヒートマップの見方
- セクターローテーションとは
- 分類基準は実は2つある
- 日本株式の分類は33業種
という順番でセクターについて書いていきます。
S&P500ヒートマップとはFinvizが運営する、S&P500銘柄の騰落率などが一覧できる以下の図表を掲示したページのこと。米国株投資をしている人なら一度は目にしたことがあると思います。セクターごとにブロックになっていて、これの見方を知っておくとめちゃくちゃ便利です。

セクター別にブロックになっていて、それをわかりやすくしたものがこれ。

この米国株のセクター分類についてもうちょっと細かく見ていきましょう!
目次
米国株は全11セクター、セクターETFで覚えよう
セクター | 英語表記 | セクターETF① | セクターETF② |
情報技術 | Information Technology | XLK | VGT |
金融 | Financials | XLF | VFH |
通信サービス | Communication Services | XLC | VOX |
ヘルスケア | Health Care | XLV | VHT |
一般消費財 | Consumer Discretionary | XLY | VCR |
生活必需品 | Consumer Staples | XLP | VDC |
資本財 | Industrials | XLI | VIS |
不動産 | Real Estate | XLRE | VNQ |
エネルギー | Energy | XLE | VDE |
公益事業 | Utilities | XLU | VPU |
素材 | Materials | XLB | VAW |
米国の企業は大きく分けて上の11のセクターに分類されます(ヒートマップの左ブロック→右ブロックの順に並べてあります)。
これがさらに細かく分類されるわけですが、とりあえずざっくり11の分類を頭にたたきこみましょう。
この11セクターには対応する代表的なセクターETF(上場投信)が2つあります(表の右2列)。
ティッカーがXで始まる左側のETFがステートストリート社のSPDR(スパイダー)シリーズ、Vで始まる右側のETFがヴァンガード社のものです。
SPDRはS&P500の銘柄からなる「S&P セレクト・セクター指数」、ヴァンガードはもう少し広く米国市場全体から選ばれた銘柄からなる「MSCI US インベスタブル指数」をベンチマークとしており、構成銘柄や比率は両者で違います。
ただ、いずれも数十億ドルの資産がある超巨大ETFであり、時価総額はS&P500構成銘柄が圧倒的に大きいことから、同じセクターETFの値動きはほぼ同じといっていいでしょう。
つまり、セクターの動向を見る上では、どちらのETFの値動きを観察してもさしつかえないということです。
セクター分類も微妙に違っているんですが、ややこしくなるのでまずは上記の分類を覚えておけばいいと思います。これは後で見方を解説するFinbiz「S&P500ヒートマップ」の分類と同じだからです。
S&P500構成銘柄の27%が「情報技術」セクター
米国の11セクターをざっくり頭に入れたところで、S&P500のセクター構成比を見てみましょう。数字は「S&Pダウジョーンズインデックス 指数ハンドブック」より。

データが2021年をもとにしているため、構成比の順位には変動があると思いますが、おおむねこれくらいの大きさ(時価総額)の違いがあるという目安になります。
これを見ると情報技術セクターが27%超で全体の4分の1以上を占め、最も大きいのがわかります。ここにはアップル、マイクロソフトや半導体銘柄など時価総額の巨大な銘柄が名を連ねていて、成長速度も他のセクターより速いからでしょう。
次いでヘルスケア、一般消費財、通信サービス、金融が10~15%の似たような比率で続いています。
それぞれのセクター別ETFの組み込み銘柄や構成比は次の章で見ていきます。もっと細かい情報は、ヴァンガード、ステートストリートの各ホームページをご覧ください。
両者のETFとも本当に経費率が小さいため、セクターの動向を見るためだけでなく、積立投資や短期売買にも利用できます。
各セクターの構成銘柄
ここではS&P500のセクターETFであるSPDRの構成銘柄を見ていきます。
掲載している表は各セクターETFを構成する上位15銘柄とティッカーシンボル、およびセクター内の構成比率です(2023年4月現在)。その下はこの表を円グラフにしたもの。
ここでもセクターはヒートマップの左ブロック→右ブロックの順に並べています。
情報技術(XLK)
銘柄 | ティッカー | 構成比 |
マイクロソフト | MSFT | 23.60% |
アップル | AAPL | 22.84% |
エヌビディア | NVDA | 4.76% |
ブロードコム | AVGO | 3.72% |
シスコシステムズ | CSCO | 2.90% |
セールスフォース | CRM | 2.56% |
アドビシステムズ | ADBE | 2.30% |
テキサスインスツルメンツ | TXN | 2.25% |
アクセンチュア | ACN | 2.20% |
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ | AMD | 2.16% |
クアルコム | QCOM | 1.88% |
オラクル | ORCL | 1.85% |
インテル | INTC | 1.67% |
イントゥイット | INTU | 1.60% |
アイ・ビー・エム | IBM | 1.58% |
その他 | 22.13% |

通信サービス(XLC)
銘柄 | ティッカー | 構成比 |
メタ・プラットフォームズ | META | 22.07% |
アルファベット(クラスA) | GOOGL | 12.20% |
アルファベット(クラスC) | GOOG | 10.91% |
ベライゾン | VZ | 7.75% |
Tモバイル | TMUS | 4.27% |
ウォルトディズニー | DIS | 4.20% |
ネットフリックス | NFLX | 4.10% |
チャーター・コミュニケーションズ | CHTR | 4.06% |
アクティビジョン・ブリザード | ATVI | 4.05% |
コムキャスト | CMCSA | 4.04% |
AT&T | T | 3.87% |
ワーナー・ブラザース・ディスカバリー | WBD | 3.50% |
エレクトロニックアーツ | EA | 3.28% |
テイクツー・インタラクティブ | TTWO | 2.03% |
オムニコム・グループ | OMC | 1.94% |
その他 | 8.73% |

金融(XLF)
銘柄 | ティッカー | 構成比 |
バークシャー・ハサウェイ | BRK.B | 12.58% |
JPモルガン | JPM | 8.65% |
ビザ | V | 8.22% |
マスターカード | MA | 6.84% |
バンク・オブ・アメリカ | BAC | 4.49% |
ウェルスファーゴ | WFC | 3.31% |
モルガンスタンレー | MS | 2.60% |
S&Pグローバル | SPGI | 2.56% |
ゴールドマンサックス | GS | 2.43% |
ブラックロック | BLK | 2.24% |
アメリカン・エキスプレス | AXP | 2.19% |
チャールズシュワブ | SCHW | 1.99% |
シティグループ | C | 1.98% |
ペイパル | PYPL | 1.92% |
プログレッシブ・コープ | PGR | 1.89% |
その他 | 36.11% |

ヘルスケア(XLV)
銘柄 | ティッカー | 構成比 |
ユナイテッドヘルス | UNH | 9.27% |
ジョンソン・エンド・ジョンソン | JNJ | 8.42% |
アッヴィ | ABBV | 5.76% |
メルク | MRK | 5.58% |
イーライリリー | LLY | 5.49% |
ファイザー | PFE | 4.76% |
サーモフィッシャー | TMO | 4.54% |
アボット・ラボラトリーズ | ABT | 3.57% |
ダナハー | DHR | 3.36% |
ブリストルマイヤーズ | BMY | 2.99% |
アムジェン | AMGN | 2.59% |
エレバンス・ヘルス | ELV | 2.34% |
メドトロニック | MDT | 2.20% |
CVSヘルス | CVS | 2.07% |
ギリアド・サイエンシズ | GILD | 2.05% |
その他 | 35.01% |

一般消費財(XLY)
銘柄 | ティッカー | 構成比 |
アマゾン | AMZN | 24.09% |
テスラ | TSLA | 15.44% |
ホームデポ | HD | 9.23% |
ナイキ | NKE | 4.73% |
マクドナルド | MCD | 4.52% |
ロウズ | LOW | 3.88% |
スターバックス | SBUX | 3.74% |
ブッキングホールディングス | BKNG | 3.15% |
TJXカンパニーズ | TJX | 2.84% |
オライリー・オート・パーツ | ORLY | 1.66% |
ゼネラルモーターズ | GM | 1.53% |
オートゾーン | AZO | 1.46% |
チポトレ・メキシカン・グリル | CMG | 1.45% |
フォード | F | 1.43% |
マリオット・インターナショナル | MAR | 1.43% |
その他 | 19.42% |

生活必需品(XLP)
銘柄 | ティッカー | 構成比 |
プロクター・アンド・ギャンブル | PG | 15.08% |
ペプシコ | PEP | 10.74% |
コカ・コーラ | KO | 10.40% |
コストコ | COST | 9.60% |
モンデリーズ・インターナショナル | MDLZ | 4.71% |
ウォルマート | WMT | 4.50% |
フィリップモリス | PM | 4.36% |
アルトリアグループ | MO | 4.22% |
コルゲート・パーモリーブ | CL | 3.13% |
エスティローダー | EL | 2.82% |
ゼネラル・ミルズ | GIS | 2.46% |
キンバリークラーク | KMB | 2.20% |
アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド | ADM | 2.12% |
モンスタービバレッジ | MNST | 2.04% |
シスコ | SYY | 1.92% |
その他 | 19.70% |

資本財(XLI)
銘柄 | ティッカー | 構成比 |
レイセオン・テクノロジーズ | RTX | 4.97% |
ユナイテッド・パーセル・サービス | UPS | 4.66% |
ハネウェル | HON | 4.41% |
ユニオンパシフィック | UNP | 4.04% |
ボーイング | BA | 4.00% |
キャタピラー | CAT | 3.99% |
ロッキードマーティン | LMT | 3.76% |
ディア・アンド・カンパニー | DE | 3.71% |
ゼネラルエレクトリック | GE | 3.41% |
ADP | ADP | 3.11% |
イリノイ・ツール・ワークス | ITW | 2.26% |
イートン・コーポレーション | ETN | 2.26% |
ノースロップ・グラマン | NOC | 2.25% |
CSXコーポレーション | CSX | 2.13% |
スリーエム | MMM | 2.00% |
その他 | 49.04% |

不動産(XLRE)
銘柄 | ティッカー | 構成比 |
プロロジス | PLD | 12.65% |
アメリカン・タワー | AMT | 11.07% |
エクイニクス | EQIX | 7.55% |
クラウン・キャッスル | CCI | 6.66% |
パブリック・ストレージ | PSA | 5.52% |
リアルティ・インカム | O | 4.55% |
サイモン・プロパティ・グループ | SPG | 4.03% |
ウェルタワー | WELL | 3.84% |
VICIプロパティーズ | VICI | 3.55% |
デジタル・リアルティ | DLR | 3.42% |
SBAコミュニケーションズ | SBAC | 3.26% |
CBREグループ | CBRE | 2.76% |
アバロンベイ・コミュニティーズ | AVB | 2.67% |
ウェアーハウザー | WY | 2.54% |
エクストラ・スペース・ストレージ | EXR | 2.52% |
その他 | 23.41% |

エネルギー(XLE)
銘柄 | ティッカー | 構成比 |
エクソン・モービル | XOM | 23.67% |
シェブロン | CVX | 19.43% |
マラソン・ペトロリアム | MPC | 4.69% |
シュルンベルジェ | SLB | 4.57% |
コノコフィリップス | COP | 4.12% |
EOGリソーシズ | EOG | 4.06% |
バレロ・エナジー | VLO | 3.94% |
フィリップス66 | PSX | 3.62% |
パイオニア・ナチュラル・リソーシズ | PXD | 3.50% |
オキシデンシャル・ペトロリウム | OXY | 3.44% |
ウィリアムズ | WMB | 2.79% |
ヘス | HES | 2.66% |
キンダー・モルガン | KMI | 2.61% |
デボン・エナジー | DVN | 2.44% |
ハリバートン | HAL | 2.20% |
その他 | 12.26% |

公益(XLU)
銘柄 | ティッカー | 構成比 |
ネクステラ・エナジー | NEE | 15.43% |
デューク・エナジー | DUK | 7.66% |
サザン・カンパニー | SO | 7.63% |
アメリカン・エレクトリック・パワー | AEP | 4.82% |
ドミニオン・エナジー | D | 4.74% |
センプラ・エナジー | SRE | 4.74% |
エクセロン | EXC | 4.25% |
エクセル・エナジー | XEL | 3.77% |
コン・エジソン | ED | 3.51% |
WECエナジー・グループ | WEC | 3.05% |
パブリック・サービス・エレクトリック・アンド・ガス | PEG | 3.02% |
アメリカン・ウォーター・ワークス | AWK | 2.81% |
エバーソース・エナジー | ES | 2.71% |
エジソン・インターナショナル | EIX | 2.69% |
パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック・カンパニー | PCG | 2.63% |
その他 | 26.54% |

素材(XLB)
銘柄 | ティッカー | 構成比 |
リンデグループ | LIN | 19.14% |
エアー・プロダクツ・アンド・ケミカルズ | APD | 7.14% |
フリーポート・マクモラン | FCX | 6.07% |
シャーウィン・ウィリアムズ | SHW | 6.00% |
コルテバ | CTVA | 4.74% |
エコラボ | ECL | 4.49% |
ニューモント | NEM | 4.48% |
ニューコア | NUE | 4.33% |
ダウ | DOW | 4.12% |
デュポン | DD | 3.93% |
PPGインダストリーズ | PPG | 3.37% |
アルベマール | ALB | 2.86% |
ライオンデルバセル・インダストリーズ | LYB | 2.52% |
バルカン・マテリアルズ | VMC | 2.51% |
インターナショナル・フレーバー・アンド・フレグランス | IFF | 2.47% |
その他 | 21.83% |

S&P500の構成上位15銘柄
各セクターごとに上位銘柄の構成比を見ていると銘柄の本当の大きさがわかりにくくなると思いますので、S&P500全体の上位15銘柄と構成比を載せておきます。

GAFAMと呼ばれる銘柄群(GOOGL、AAPL、META、AMZN、MSFT)がいまなお上位に君臨していますが、構成比を見ると今はAAPLとMSFTの「2強時代」という印象です。
これらに猛追しているのがエヌビディアとテスラ。
ネット社会をリードし支配する企業が世界の投資マネーを牛耳ってるんですねえ。
セクターETFをチャートで比較してみると、、、
全セクターと構成銘柄の紹介を終えたところで、ETFの値動きをチャートで比較してみましょう。
下は最初に紹介したSPDR(スパイダー)のセクターETFの2013~2023年の過去10年の月足チャートです。配当調整済み(=配当込みの値動き)になっています。

同じセクターETFを今度はコロナショック(2020年3月)から約3年間のチャートにしてみました。

見にくいかもしれませんが、細かいことは気にせず、まずはセクター別に値動きやパフォーマンスにこれだけの差が出ることを見ておいてください。まあ当たり前の話なんですが。
10年チャートの一番上のオレンジ線が情報技術(XLK)で、10年で価格は+560%、およそ6.6倍に値上がりしています。その下の赤線がナスダック100指数のETF(QQQ)で+495%(約6倍)。前の章で説明した通り情報技術銘柄の成長がナスダック全体をけん引しているのがわかります。
2020年3月のコロナショックによる暴落後、情報技術セクター(XLK)は2021年後半まではなんだかんだ調子良かったものの、2022年に大きく失速しました。そして2023年に入って再び上がってきています。
10年チャートで一番下をはうようにある緑線がエネルギーセクター(XLE)で、10年間でわずか+55%(約1.5倍)。でもコロナショック後からの伸び、特に2022年以降の伸びはすさまじく、コロナショックを起点にすると+206%、約3倍も値が上がっています。
エネルギー価格高騰は世界的なインフレの原因となり、このセクターを構成するエネルギー関連銘柄(石油メジャーや天然ガス開発など)のみが恩恵を受けている感じですが、10年と3年でこれだけパフォーマンスに差が出るというのも驚きです。
黄色の線が一般消費財(XLY)で、これはAmazonとテスラが構成比の大半を占めます。コロナ禍で回復相場をけん引したセクターですが、2022年には情報技術と同様に大きく下げました。
2022年に最も下げたのが通信サービスのセクター(XLC)です。GAFAの一角に数えられたフェイスブック(現在のメタ)が業績不振で大幅下落したことが大ブレーキとなりました。
ちなみにチャートの中ほどにある白線がS&P500全体の値動きです。S&P500連動の投資信託を積み立てている人は多いと思いますが、この白線より下のセクターは足を引っ張っていることになりますが、今見てきたエネルギーも通信サービスも買う時期・期間を変えると他セクターより成長に貢献したわけで、このバランスがS&P500のすぐれたところです。
このように、期間をいろいろ変えてパフォーマンスを比較して見ると、セクター動向がよくわかるのではないでしょうか。個別銘柄のトレードをする際にも、このセクター別のトレンドを把握しておくとトレンドがわかっていいと思います。
例えば、石油関連を含むエネルギーセクター(XLE)はだいぶ値上がりしたけど、金融引き締めの効果で徐々に落ち着いてきていて今買うのは危険だとか、最も安定的に成長しているのはヘルスケア(XLV、紫線)だなとか。
まあ後からならどうとでも言えるわけですが、セクターの動向を定期的に観察していると、勢いのある/なし、買い時/売り時がある程度見えてくることも確かなのです。
では次に、セクター動向を最もわかりやすく確認できるツール「ヒートマップ」を紹介しましょう。
ヒートマップでセクターを見てみよう
S&P500の銘柄の騰落率を緑と赤の濃度で教えてくれる有名なツールサイトがあります。
それが冒頭で紹介したFinvizのヒートマップです。米国株投資には必須のツールですので、関心のある方ならどこかでご覧になったことがあるのではないでしょうか。

この1マス1マスが銘柄と時価総額の大きさを表しています。この中で見るとAAPL(アップル)とMSFT(マイクロソフト)が大きく、GOOG(グーグル=会社名アルファベット)、AMZN(アマゾン)が続く感じです。
このヒートマップの銘柄はバラバラに並んでいるのではなく、きちんと11セクター別にブロック分けされています。
下はそれをわかりやすく簡略化した図です。

各ブロックがセクター名、英語セクター名、セクターETF(左SPDR/右バンガード)の順になっています。
バンガードのETFはここでは若干分類が異なり、S&P500銘柄だけでなく米国市場全体のセクターを示しますが、ここでは一緒に覚えるために便宜上入れています。
右側半分の配置は2020年12月のTSLA(テスラ)のS&P500一般消費財(XLY)への組み入れにより大きく変わりました。
その後、2021年、2022年と再び右側(主に下のセクター群)の配置が入れ替わりました。GAFAMがさらに巨大化したり、エネルギーセクターが大きくなるなどして、時価総額の大きいセクターと小さいセクターの差が広がったためと思われます。
ヒートマップは特定の銘柄のマス目にカーソルを置くと、その銘柄を含む同じグループの銘柄の騰落率も一緒にが出てきますので試してみてください。
たとえば以下はテクノロジーの中にある半導体(SEMICONDUCTORS)の銘柄のグループ一覧です。直近の値動きのチャートも出ますから、個別の材料による値動きなのか全体のセクター動向なのかがこれでわかります。

セクターごとの騰落率とローテーションの調べ方
Finvizのヒートマップはすぐれたツールと思いますが、銘柄ごとに高安まちまちなことも多く、いったいどのセクターが買われているのかわからないことが多々あります。
そんなときは、セクター別の騰落状況がわかる「グループ」のページがおすすめです。
これは上部のタブの「Groups(グループ)」をクリックすると開きます。

ここを開くと次のようなページが出てきます(出てこない場合はそのページの上にある「Bar Chart」のタブをクリック!)。


これを見れば、11セクターの各期間ごとの騰落率がよくわかります。
上から「1日」「1週間」「1ヶ月」「3ヶ月」「半年」「1年」「年初来」の順に騰落率が棒グラフ化されています。
例えば、「1YEAR」あるいは「YEAR TO DATE(年初来)」を見るとTechnology(情報技術)とConsumer Cyclical(一般消費財)が大きく伸びて市場を牽引していたのがわかります。
一方で、上の方の「1DAY」「1WEEK」を見ると、Utilities(公益事業)やBasic Materials(素材)が強く、「1MONTH」だとEnergy(エネルギー)が強かったのがわかります。
「1DAY」を毎日観察していると、けっこう連日で同じセクターが上がっていることもありますが、日替わりで上位セクターが変わることもあります。
これを「セクターローテーション」と言いますが、そんなコロコロとトレンドが変わる相場なら、あまり値動きに一喜一憂しなくても問題ないと判断できます。
逆にこれまで好調だったセクターが3日連続で下落したりすると、トレンド転換が起きたのかもしれない、と身構えることもできます。そういうときは落ち着くまで買い増しを控えるとか、さらに落ちるならいったん撤退するとかいうこともできるわけです。
セクターETFのヒートマップもある
このほかFinvizにはETF(Exchange Trade Funds)のヒートマップもあるので、主要なETFが頭に入っている人なら、そこから傾向を読み取ることも可能です。
通常のヒートマップの左上に選択項目があり、ここのExchange Trade Funds(ETFのこと)をクリックすると、下のようなETFマップに切り替わります。

この左下のブロックに「US SECTOR(米国セクター)」があり、この部分を拡大したのが下図です。

ここにSPDRのXLK・XLE・XLFやヴァンガードのVGT・VNQなどのセクターETFの騰落率が示されています。
ヒートマップの各銘柄の四角形の面積は時価総額の大きさを示していると前に書きましたが、ETFの場合は投資信託なので純資産額の大きさということになります。SPDRのETF(Xで始まるETF)が目立つのは、バンガードのセクターETFより純資産額が大きいからということになります。
僕の推測ですが、SPDRのセクターETFはS&P500企業のみに連動している分、全米企業をカバーするバンガードのETFより流動性が大きく、セクターの動向を短期で反映しやすいため、短期取引で利益を狙う投資家に人気なのではないかと思います。
期間を変えての比較はTradingViewで
これ以外にも、僕はTradingView(トレーディングビュー)のチャートページでセクターごとの動向を観察しています。ウォッチリストにセクターETFを入れ、個別銘柄と比べながら日々の騰落率を眺めたり、セクターETFのチャートを比較したりします。

上はウォッチリストに並べたSPDRのセクターETF。数字は左からETFの価格(ドル)、騰落値幅(ドル)、騰落率(%)です。前日より上昇すると緑、下落すると赤に表示されるのはヒートマップと同じですね。その点、日本のSBIや楽天のチャートとは真逆なので、ちょっと不思議です。
僕はTradingViewは有料版を使っていますが、無料版でも十分ウォッチは可能です(ただし会員登録は必要)。
先に示したセクターETFの比較チャートもTradingViewで作成したものです。

TradingViewチャートがすごいのは、「配当調整済み」のチャートを出せるところ。
投資はキャピタルゲインとインカムゲインをあわせたトータルのパフォーマンスで見る必要があるため、単に株価の推移だけを見ているだけでは配当を出さないグロース株と高配当を出すバリュー株は比較になりません。
その点、配当金を再投資したと仮定する「調整済み」価格での騰落率が出せれば、現実に近いパフォーマンスの比較ができることになります。
セクターETFも投資信託であり、分配金が定期的に出ますから、調整済みで比較する必要があります。
先の章でエネルギーセクターは10年で+55%と書きましたが、配当調整しないと10年でマイナス2%です。同セクターは高配当銘柄が多いため、配当調整にしないとまったく投資家は恩恵を受けていないことになってしまいますが、実際にはそんなことはないのです。
チャートのツールでは Investing.com も非常に便利ですが、この配当調整ができないので長期で使うには注意が必要です(もしかしたら配当調整設定ができるのかもしれませんが、よくわかりません)。
それはさておき、セクターやセクターETFの動きをこうしたツールを使って頭に入れておくと、判断材料が一気に増えて投資が面白くなってきます。
米国株セクター投資のおすすめ本
短期間でのセクターローテーションとは別に、景気や金利環境の変化に応じてもセクターが変動していきます。
下の図は景気の好悪や金利の高低(インフレ・デフレ)に伴ってどのセクターが買われやすいかを示した図です。

これは広瀬隆雄氏の著書『Market Hack流 世界一わかりやすい米国式投資の技法』に出ている図にどなたかが色をつけて加工したもの。
この相場の4局面の循環については浦上邦雄氏の名著『相場サイクルの見分け方』でも触れられています。
本の紹介と解説はこちらをどうぞ。

要するに相場には、金融相場、業績相場、逆金融相場、逆業績相場という4つの局面があり、これが循環することで買われる/売られるセクターも変わってくるということです。
どの局面になっても保有する株がいっぺんに沈んだりしないよう、いまがどの局面なのか、セクター分散も併せて考えておくのが投資には大事になってきます。
米国株投資の入門書としては、米国株ブロガー・YouTuberとしても人気のもみあげ氏の著書『もみあげ流米国株投資講座』(ソーテック社)もおすすめです。
詳細は別の記事でまた書きたいと思いますが、セクター意識をきちんと踏まえた上で個別株や投信・ETF、テーマ株などが紹介されている点が類書にはない魅力です。
セクター分類の基準はGICSとICBの2種類ある
ここからはちょっとめんどくさい話。僕も勉強のために書きましたが、興味がない人は飛ばして大丈夫です。
米国株式のセクター分類には2つの分類基準があるという話を先に少し触れました。
それがGICSとICBです。
両方とも、大きく分ければ11セクターの分類なので、「じゃあどっちでもいいじゃん!」と思うところですが、実は微妙に分類方法やセクター名が異なっているからややこしい。
それぞれみていきましょう。
①GICS
最初にGICSです。Global Industry Classification Standard=世界産業分類基準。
これは格付け会社S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)と投資情報会社MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)が1999年につくった産業分類です。
主にSPDR(スパイダー)シリーズのETFで知られるステートストリート社などがこのGICSを採用しています。
全体を大きく11のセクターに分類し、その下に25の産業グループ、74の産業、163の産業サブグループという4つの階層を設定しています(図はMSCIのホームページより)。

GICSの11セクター分類は以下の通り(GICS分類順)。
- エネルギー(Energy)
- 素材(Materials)
- 資本財(Industrials)
- 一般消費財(Consumer Discretionary)
- 生活必需品(Consumer Staples)
- ヘルスケア(Health Care)
- 金融(Financials)
- 情報技術(Information Technology)
- 通信サービス(Communication Services)
- 公益事業(Utilities)
- 不動産(Real Estate)
②ICB
続いてICB。Industry Classification Benchmark=業種分類ベンチマーク。ベンチマークとは「基準・指標」といった意味です。
こちらはFTSE Russell(フィッツィ・ラッセル)のブランドで事業を展開する金融サービス会社、FTSEインターナショナルが運用・管理している分類基準です。
主にバンガード社がこの分類を採用しています。

ICBも大きく分けてまず11に分類していますが、GICSのように「セクター(sector)」とは呼ばず「産業(Industry)」という名で分類しています。
で、その下に20のスーパーセクター、45のセクター、173のサブセクターと中小分類しています。
ICBの11セクター分類は以下の通り(順番は「ICBの構造」より)。
- Technology (情報技術)
- Telecommunications(情報通信)
- Healthcare(ヘルスケア)
- Financials(金融)
- Real Estate(不動産)←旧金融セクターから分離独立
- Consumer Discretionary(一般消費財)←旧Consumer Services(消費サービス)
- Consumer Staples(生活必需品)←旧Consumer Goods(消費物?)
- Industrials(資本財)
- Basic Materials(素材)
- Energy(エネルギー)←旧Oil and Gas(石油・ガス)
- Utilities(公益)
旧ICBは分類名がGICSとかなり違っていましたが、2019年以降順次改良し、だいぶ似通ってきました。
とはいえ、細かいところで違いが見られます。それを次の章で見ていきましょう。
GICSとICBの分類の大きな違い
GICSとICBの分類の違いで特にわかりにくいのが通信サービス関連と金融サービス関連の一部の分類方法です。
それを簡単に見ておきましょう。
通信セクター
通信サービス関連の分類は、GICSでは「通信サービス(Communication Services)」、ICBでは「Telecommunications(情報通信)」となっています。
GICS【Communication Services(通信サービス)】
通信サービス会社に加え、ネットを通したコミュニケーションツールや娯楽、たとえばDIS(ディズニー)、NFLX(Netflix)、GOOGL(アルファベット)、META(旧フェイスブック)も含む
ICB【Telecommunications(情報通信)】
T(AT&T)、VZ(ベライゾン)などいわゆる狭義の「通信サービス」が対象。上記GICSで通信サービスに分類されていた銘柄は
- GOOGL、META → Technology (情報技術)
- DIS、NFLX → Consumer Discretionary(一般消費財)
にそれぞれ分類。
例で示した4社はいずれも巨大デジタルプラットフォーマーですが、メディア系の娯楽はICBでは消費者サービスという考えのようです。同様の巨大プラットフォーマーではAMZN(アマゾン)も一般消費財に分類されています。
GOOGLとMETA(旧フェイスブック)はAPPL(アップル)と同じTechnology (情報技術)というくくりですが、こちらも消費者サービスの側面もあり、もはやどっちに入れるかの境界線はかなりあいまいな気がします。
金融セクター
こちらの金融セクターは、GICS / ICBともにセクター分類は「金融(Financials)」となっていますが、クレジットカード会社など決済サービスの扱いに違いがあります。
GICS → クレジットカード会社も含む
V(ビザ)、MA(マスターカード)、AXP(アメリカンエクスプレス)など
ICB → クレジットカード会社は含まない
上記カード会社 → 【Technology (情報技術)】に分類
ほかにも細かくみていくと違いはいろいろあるのですが、深みにはまってしまいそうなのでこのへんで。
このあたりの違いを把握しておくと、たとえばICB基準のバンガード社とGICS基準のそれ以外のETFのセクターの相違が分類基準によるものだと気づくのではないかと思います。
さらに細かな分類の相違について知りたい方はそれぞれの説明ページを参照してください。
- GICS→MSCIのホームページ
- ICB→FTSEラッセルの業種分類ベンチマーク(ICB)
ヒートマップの消費関連
さて、2つの産業分類基準について触れてきましたが、ここである問題が。
先に紹介したFinvizの消費関連セクターについてです。

FinbizのS&P500ヒートマップでは右肩に消費関連セクターがふたつ並んでいますが、よく見ると、
- 「CONSUMER CYCLICAL」
- 「CONSUMER DEFENSIVE」
という名前で分類されています。
この消費関連セクターはGICSとICBでは、
- 「CONSUMER DISCRETIONARY」
- 「CONSUMER STAPLES」
という名前で分類されていますが、いったい何が違うんでしょう。
結論からいうと、両者はぞれぞれ「一般消費財」「生活必需品」を別の名前で呼んでいるだけと考えていいでしょう。
厳密にいえば英語のニュアンスの違いはあるんだろうと思います。一般消費財では、
- CYCLICAL(シクリカル)ーー「循環」「周期」という意味で、景気循環と密接にかかわりがあるということ。
- DISCRETIONARY(ディスクレショナリー)ーー「自由裁量」の意味で、別に消費・購入しなくても生活には困らない、買うか買わないかは消費者の自由ということ。
という違い。でも両者とも「好景気だと買われやすいけど、買わなくても別に困らない」という意味では同じですよね。
- AMZN(Amazon)=INTERNET RETAIL(ネット小売)
- MCD(マクドナルド)SBUX(スターバックス)=RESTAURANTS(外食)
- NKE(ナイキ)=FOOT WEARS(靴)
- TSLA(テスラ)GM(ゼネラルモータース)F(フォード)=AUTO MANUFUCTURES(自動車)
ナイキ(NIKE)の靴とかスタバ(SBUX)でフラペチーノとか。なくても困らないという意味では「ぜいたく品」です。
テスラ(TSLA)やフォード(F)など自動車もここに入ります。生活に必要な人もいるでしょうけど、一般的にはやはりぜいたくな買い物で、景気のいいときに買われ、そうでないときは買われないものですね。
一方、生活必需品のほうの名称は、
- DEFENSIVE(ディフェンシブ)ーー原義は「防衛的」「守りの」なので、生活防衛の品物という意味でしょうか。
- STAPLES(ステイプルズ)ーー「主要なもの」「必需品」「食糧」という意味があります。
という感じでしょうか。解釈はテキトーですけど、どちらも「生活を守るために必要な品物」であり、またそれを調達するためのスーパーや小売店などもここに含まれます。
- WMT(ウォルマート)COST(コストコ)=DISCOUNT STORE(デゥスカウントストア)
- PG(プロクター・アンド・ギャンブル)=HOUSEHOLD & PERSONAL PRODUCTS(家庭用品)
- KO(コカ・コーラ)PEP(ペプシコ)=BEVERAGES(飲料)
- PM(フィリップモリス)MO(アルトリアグループ)=TABACCO(タバコ)
P&G(PG)やコカ・コーラ(KO)は日本でもおなじみですね。コストコ(COST)も都市部に近年増えて人気が高まっています。
タバコが必需品かというと疑問が残るところですが、習慣化している人にとってはなくてはならないものなんでしょう。
景気がよかろうと悪かろうとみんなが日常的に買ったり利用したりする銘柄群と理解すればいいと思います。
ちなみに日本の分類は33業種!
米国株のセクター分類について見てきましたが、最後に比較のために日本の分類も見ておきましょう。
東京証券取引所を運営する日本取引所グループ(JPX)は、上場している銘柄を全部で33業種に分類しています。米国のセクターのちょうど3倍ですね。
これは総務省が定める「日本標準産業分類」に基づきます。
GICSも11セクターの下位に24の産業グループを設けていますが、それよりもさらに多いんですね。
JPXはこれを業種別に指数化して騰落状況を逐次公表していますので(東証株価指数33業種)、定期的にウォッチしておくと局面とトレンドの関係が見えてくるかもしれません。
33分類と指数、前日比騰落率はこんな感じ。

四季報などで日本企業の銘柄コードを調べるとわかりますが、本来は違う業種の番号(1000番台、2000番台〜のような)のところに新しい銘柄が分類されてたりします。これは分類が細かすぎる弊害なんではないでしょうか。
3800社も上場する時代を想定していなかったからなんでしょうが、日本の産業分類にこだわらず、時代に即した新たな銘柄の分類方法が必要なんではないかと思います。米国のティッカーシンボルのような。
僕は日本株では業種別ETFの短期トレードなどはほぼしないため、いちいち業種別騰落は気にしていませんが、循環するという意味では米国株と同じようなサイクルをたどるはずです。
可能なら、日本と米国の分類と相場4局面を1つにまとめたグラフをいつかつくってみたいですね。
- 米国株のセクター分類にはGICSとICBの2つの基準が存在する
- ICBの分類が2020年3月に変更となった
- 両者とも11セクターだが、通信セクターなどに違いがある
- セクターETFを覚えておくとなにかと便利
- セクターの騰落やローテはFinvizを使うと把握しやすい
- 相場の4局面によって買われるセクターが違ってくる
- 日本株は33業種に分類されている(多すぎて弊害も)