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r>g(アール大なりジー)を1分で解説|読まずに語れるピケティ『21世紀の資本』

 

ぐれあむ勉
ぐれあむ勉
こんにちは、ぐれあむです。

今日も投資の勉強していきましょう!

 

今日は、フランス人経済学者トマ・ピケティとその著書『21世紀の資本』の話を書きます。

しるぶぷれ~

ピケティ氏(以下敬称略)が2013年に発表した本書は、資本主義の矛盾を見事にあぶりだし、経済学に一大センセーショナルを巻き起こしました。

この本の中身とそこで示された不等式「r>g(アール大なりジー)」の意味、さらにその式の裏側にあるお金持ちになるヒントを解説していきます。

21世紀の資本

全部読まずに1分で要点だけサクっと知りたい人は、コチラに飛んでください。

 

立身出世か資産家の娘との結婚か

本題に入る前に、まずは『21世紀の資本』と関係の深い小説の話をします。

文豪バルザックの代表作『ゴリオ爺さん』。ご存知でしたか?

新潮文庫のゴリオ爺さん

 

物語の舞台は1819年のパリ。

登場人物は、南仏の田舎から出てきた文無し貴族のラスティニャック、世知にたけた極悪人ヴォートラン、そして隠居老人のゴリオ爺さんら、キャラの濃い連中ばかり。みなパリの同じ安下宿に暮らしています。

ラスティニャックは立身出世と社交界への進出に野心を燃やす若き法学生です。この世間知らずの青年を利用してやろうと、悪党ヴォートランが彼に悪事を持ちかけます(以下の会話は原作をもとに私が勝手に作り替えた翻案ですので注意)。

裁判で使う木づちと法律書

ヴォートラン「ものすごい努力して検察官や裁判長、弁護士になっても収入はたかがしれてる。それより資産家の娘を紹介してやるから、彼女と結婚しろ。結婚すれば、何十年も努力して勤勉に働いて得る収入の何十倍もの資産がいっぺんに入り、出世も思いのままだぜ、ふっふっふ」

ラスティニャック「そんな娘がどこにいるんだい?」

ヴォートラン「同じ下宿のすぐ向かいの部屋に住んでいるさ」

ラスティニャック「ヴィクトリーヌが!?彼女は無一文じゃないか」

ヴォートラン「非嫡出子で父に認知されていないからな。このままだと彼女の兄が100万フランの財産すべてを相続しちまって、彼女には一銭もお金が入らないのさ」

ラスティニャック「それで僕にどうしろっていうの?」

ヴォートラン「俺がその兄を殺して、彼女が資産を相続できるようにしてやる。おまえは彼女と結婚してそれをせしめる。そこから俺に金をよこせ」

ラスティニャック「まぢか〜」

剣を持つ男の写真

 

かいつまんで書くとだいたい内容はこんな感じ。ヴォートラン、ラスティニャックがこの後どうなるかは小説を読んでのお楽しみ。

さて、もう一人の主役、ゴリオ爺さんの話も書いておきましょう。

ゴリオ爺さんはアパートの一番粗末な部屋に住み、下宿人みんなに嘲笑されています。でも、実はもともとは製麺業で財をなした資産家だったのです。

ところが、ふたりの愛娘を貴族の妻へと嫁がせるために1人につき50万フランずつ、合わせて100万フランの大金を投じ、自らは貧乏人に転落してしまったという設定です。

青年ラスティニャックは、娘たちに看取られもせずに孤独に死んでいくゴリオ爺さんの悲惨な最期に立ち会い、堕落した貴族社会に失望していきます。

そして、この青年がパリと社交界に挑んでいこうと決意するところで小説は終わります。

なぐりこみだー

何か叫んでいる猫

 

大まかなストーリーはだいたいこんな感じ。

ちなみにこの小説はサマセット・モームが選ぶ『世界の十大小説』に入る1作として知られます。他の『白鯨』や『カラマーゾフの兄弟』なんかと比べると娯楽性が高く、けっこうすぐ読めちゃいますので、興味のある方はぜひご一読を。

ぐれあむ勉
ぐれあむ勉
10作中9作読みましたー
モームの『世界十代小説』

イギリスの文豪モームが1954年に刊行した小説案内。欧米圏の代表的な文豪10人を選んでその人となりや代表作の読みどころを紹介(ラインナップはWikiを参照)。文豪による格好の世界文学入門として知られる。筆者も学生時代に全作読破に挑んだが、『トム・ジョーンズ』だけ未読のまま今に至る。

 

富める者と貧しい者の格差が広がっていく

ピケティは『21世紀の資本』の中で、フランス文学の古典ともいうべきこの『ゴリオ爺さん』を何度も引用しています(ほかにオースティンとか)。

とりわけこの悪党ヴォートランのラスティニャックへの「お説教」(とは名ばかりの悪事への誘惑)の部分は、ピケティがかなりの分量を割いて繰り返し語っています。一体なんのためでしょう。

そのヒントは、小説の舞台となった1819年のフランス社会にあります。

この時期、フランスではナポレオン帝政が終わり、ルイ18世(下の絵の人物=ヴェルサイユ宮殿蔵)が復位して王政復古の時代を迎えていました。

ルイ18世の肖像画

 

国王は議会を設立して形の上では立憲君主制をとります。でも一方で、市民革命やナポレオン帝政期に力を失った王侯貴族の権利を温存したため、彼らもまた力を取り戻します。

この時代はまた、イギリスから少し遅れて興った産業革命によって財をなした人々が現れ、「ブルジョワジー(中産階級)」として台頭していきます。彼らは資本家となり、富への欲望を高めていきます。

要するに、古い体制を残しながらも新しい市民社会が始まる「フランス近代」「プレ資本主義」の萌芽の時代と言えばいいでしょうか。

とはいえ、裕福なのはひとにぎりの王侯貴族とブルジョワジーばかり。他の大多数の市民は最低限の収入すら得られず、貧困にあえいでおりました。

富裕猫の図

ソファにねそべって寝る猫の写真

 

当時、パリで最下層として生きる最低限の収入が年間400フラン程度でした。そして、何年も王侯検察官として仕えた人の年収が5000フラン。

これに対し、ヴォートランが殺そうと企んだ貴族が遺産相続する予定のお金、ゴリオ爺さんが娘たちに与えたお金の100万フランは、これを元手に年間5万フランの金利収入(年利5%)が得られる大金でした。

下層部の人々の暮らしを考えたら、とんでもない額だとおわかりいただけるでしょうか。このように、富める者はますます富み、貧しい者はずっと貧しいままの超格差社会だったわけです。

ぐれあむ勉
ぐれあむ勉
背景を知ると、田舎から出てきた青年が現実を知り、不平等から一刻も早く抜け出したいとあせる気持ちがわかってきますね

 

経済学の流れを変えたベストセラー

ピケティがこの『ゴリオ爺さん』を何度も引用したのは、当時のお金に関する生々しい記録であると同時に、まじめに働く者が報われない格差社会の縮図をこの物語に見出したからです。

彼はこの物語が示す格差の広がりを、資本主義に内在する矛盾ととらえました。

そして、この格差が19・20世紀を経て、21世紀の現代まで拡大し続けていることを実証しようとしたのです。

推測ではなく実証です。ここがすごいところ。

そのためにピケティは、15年もの歳月を費やし、18世紀から現代までの約3世紀にわたる20か国以上の富と貧困に関する数値データを収集しました。

おったまげ!

毛布から顔をのぞかせる猫

 

この地道な作業を通し、ピケティは資本主義がもたらす富の集中が貧富の格差を助長することを実証し、これまでの肯定的なとらえ方を覆したのです(もう少しくわしい内容を次のところで解説します)。

米国の著名な経済学者ポール・クルーグマン氏は「この本は我々の経済的論議を一変させた。本書によって社会の見方や経済のあり方が変わる」と絶賛しました。

こうして『21世紀の資本』は世界累計250万部を超える経済学書の大ベストセラーとなり、ピケティ自身も一躍「経済学」のトップスターに躍り出たのです。

とれびあ~ん

 

不等式「r>g」とはなにか

『21世紀の資本』の分厚い内容を簡単にまとめると、以下の3点に集約できます。

『21世紀の資本』の要点

①経済成長率より資本収益率の方が高くなる傾向がある。

②この格差不平等は世襲を通してさらに拡大していく。

③不平等是正には資産への課税強化が不可欠。

 

この①を簡潔に表したのが不等式「r>g(アール、大なり、ジー)」です。

rとはリターン(return=資本収益率)

gとはグロース(growth=経済成長率)

のこと。

労働者の所得成長は経済成長とほぼ等しいので、gは所得成長率でもあります。

つまり、この不等式が意味するのは、

資本への投資によって得られる利益の成長率は、労働によって得られる賃金上昇率を常に上回る

ということ。

もっと簡単に言えば、金持ちが投資にあてるお金の方が労働者よりずっと効率よく稼ぐってことです。

悲しい現実、、、

ねそべる猫

 

この結果、持てる資本が大きければ大きいほど資本の蓄積は進みます。

従来の経済学モデルでは、資本収益の伸び率は富や所得の大小に関係なく一定と考えられていました。

でもピケティは「いやいやそんなことはない、裕福な人ほど高い収益を上げられる」と従来モデルを否定したのです。

のんのーん!

 

たくさんの資本を持っている人ほど別の投資に回せる余裕があり、資産の運用・管理も高度な専門家に任せることができる、というのがその理由です。

まあ、考えてみればその通りですよね。

コインが右肩上がりで増えていく写真

 

富は世襲によってさらに増える

要点②は、こうして資本家がたくわえた資産は相続・世襲されていくため、労働者の格差は縮まるどころかむしろ拡大していく、ということです。

個人資産は相続税で減りはしますが、残った分を再投資すれば、株や不動産からインカムゲイン(配当や家賃収入)がまた入ってきます。

10億円の遺産が相続税で仮に半分に減ったところで、資産を持たない人と一緒のスタート地点に戻るわけじゃないですからね。

お先に~

マラソン競争で抜け出す女性の写真

 

それで思い出しましたけど、『ゴリオ爺さん』をぼろぼろの古本で読んでいた超ボンビー学生のころ、親から相続した株の配当で優雅に暮らすフトドキな友人が同級生におりました。

たしか父親が上場企業の元副社長か何かで、その会社の株を何十万株も相続したって話だったような。

この男がまたモテてモテて。

世の中って不公平だよね!

むしろそっちな!

むすっとした顔の猫の写真

 

ピケティに話を戻すと、受け継がれる資産は何も個人のものだけではありません。たとえば会社の資産。

設備や不動産、キャッシュの内部留保、さらには労働者さえも資産として蓄積され、事業存続とともに次のトップに受け継がれます。

そして例のモテモテ同級生のような、新たな「レンティア(フランス語で不労所得生活者、金利生活者のこと)」が次々と生まれていくのです。

そう考えると、格差が自然に縮まるとは到底思えませんね。

ユーロの札束

 

要するに資本家はずっと得をしている

ピケティが3世紀にわたる資本と労働のデータを積み上げ、さらに2000年の人類の成長を加味して作ったグラフがこちらです。

0~2100年のr>gのグラフ

 

これを見ると、資本収益率()が経済成長率()をずーっと上回ってます。

20世紀前半にrとgの差が急速に縮まっていますね。税引き後で見ると逆転している時期もあったようです。これは2度の世界大戦や金融恐慌によって資本の多くが破壊されたり消滅したりしたためと考えられます。でもこれもすぐ戻り、この先ずっと格差が広がっていく未来が待っています。

従来の経済学では、資本主義が進むほど富が多くの人に行き渡り、その結果所得格差が縮まって人々は平等化する、とされてきました。

硬貨を積み上げた柱が2本と、その上に屋根に見立てた三角に折ったお札

 

しかしその分析は、20世紀の先進国(主に米国)という狭い範囲に限って研究がなされた結果にすぎなかったのです。

経済学者はだれひとりとして20か国3世紀ものデータ収集などやりたがりませんからね。そんなことは歴史学者の仕事だと半ば見下していたんでしょう。

でもピケティは、このだれもしようとしなかったことを15年かけてやったのです。

そして、より長期で広範なデータを見渡すことで、戦後の先進国は資本主義の歴史の中の例外にすぎない、過去200年の資本主義下では常に資本成長が経済成長を大きく上回ってきた、と看破できたのです。

 

この格差、21世紀はどうなんの?

さきほどのグラフでもおわかりの通り、21世紀に入って先進国の経済成長率(g)が軒並み鈍化したことで、再び資本成長率(r)との差が広がり始めています。

ピケティは、この差を縮めるためには法人税や相続税などを強力な累進課税にする必要があると主張しています。

労働者の賃金を上げ、所得減税をする一方、資産に対しては増税していく。これが自然な解決策であると。

ちんあげさんせー!

何か叫んでいる猫

 

このまま何もしなければ、西暦2100年にはrとgの差はベル・エポック(産業革命が進み、消費文化が花開いて1つの頂点を迎えた時代)のころと同じくらい広がる、とも予測しています。

ただ、ピケティの提言する資本への急進的な課税には、「リスクテイクのインセンティブを弱める」という反対意見も強いようです。

リスクを取ることが経済発展の原動力なのに、成功者に大きな課税を課したらだれもリスクを取らなくなる、という考えです。

それに法人税が大きい国からは大きな企業が逃げていき、結果的に税収や雇用の低下につながります。

それもごもっとも

ピアノに乗る猫

 

しかし、中産階級が消滅し、一部の大金持ち資本家と大多数の低所得労働者とに二分される『ゴリオ爺さん』時代のような未来社会は、あまり健全とは思えませんよね。

 

格差社会、日本はどうなの?

「持てる者」と「持たざる者」の格差はわが国でも広がっています。

ピケティは『週刊東洋経済』のインタビューで、日本の状況について「欧州と似ているが欧州よりも極端なケースになっている」と語っています。

その表れとして、国民所得に対する民間資本の割合が、戦後の3倍から現在では6~7倍にふくれあがっていることを挙げ、「経済成長がスローな国では資産の蓄積がより大きくなる」と説明しています。

そして人口減少社会が進み、子供が少なくなると、相続財産(過去に蓄積された富)の割合がより大きくなるため、「時代を経るにつれて大きな不平等を生むリスクを抱えている」と警告しています。

それはこまるよ~

そろそろ歩く猫

 

『21世紀の資本』を読むにつけ、どうもわが国は税制面でことごとくピケティの提言と反対のことをやっている気がします。

賃金が上がらないまま所得減税をやめ、年収が落ち込む中、逆に低所得者ほど負担感が大きい消費増税を断行。

一方で大企業に有利な法人減税、中小企業には手厚い優遇税制を敷き、投資を促して海外との競争力を高めようとしています。

でもこのデフレ下で企業はひたすら内部留保に走り、利益を吐き出しませんから、積極投資や賃上げが進むはずがありません。

そういう意味では資本家(株主)にも還元されてないって話かも、、、。

 

私は専門家ではないので、この先の議論は政治家や経済学者に任せますが、「失われた30年」のデフレは、こんな税制面の悪循環が原因なんじゃないかと思えてなりません。

 

底なしのデフレスパイラル

螺旋階段と降りていく人間

 

結論、gではなくrの線に乗れ!

どっちみち、政府の税制面の政策転換など待っていられません。

何が正解かもわからないのです。

わかっているのは、この資本主義経済の世の中は、どうやら資本家に有利なようにできているらしいってこと。ピケティがそれを15年かけて証明してくれました。

だとしたら、我々が不等式「r>g」から学ぶことはただ1つです。

やせ衰えるgの線ではなく、拡大し続けるrの線に乗れ!

お金持ちになりたければ、資本家の側に立て!ってことです。

たつ!

立ち上がるミーアキャット

 

そのためには、一刻も早く投資にお金を回さなきゃなりません。

資本となるものに投資して、お金に仕事をさせるのです。

不平等を嘆き、社会をうらんでる時間はありません。

さあ、労働者よ今こそ立ち上がり、投資家となれ!

おー!!

こぶしをにぎる手

 

、、、あ、いや、ピケティはそんなこと何一つ言ってませんけどね。

曲解すいません

 

 

ピケティ著『21世紀の資本』と「r>g」の解説記事、いかがだったでしょうか。

僕は経済学に通じているわけではないし、経済学なんてしょせん正しい答えの出ない、宗教みたいんもんだと思っている人間なので、ピケティ氏の意見にも全面的に賛同しているわけではありません。

むしろ、言いたいことはわかるけど、高所得者や高収益の企業にぶあつく課税せよみたいな解決策ってちょっと現実離れしてない?って思ってしまっています。

僕に限らず反論もいろいろあって、ピケティ氏は都合のいいデータしか出していない、20世紀は下層の人の収入の方が上昇率が高く、格差はそこまで広がっていない、との意見もあります。下の書籍などに反論の主旨がまとめられています。

 

ですので、僕が本書をとりあげたのはあくまで「投資家目線」で読んだのであり、労働による成長も大事だけど投資(資本)による成長の方がずっと資産を増やす早道だよということを主張をしたいがために本書を援用させてもらった、というのが正しいです。

でもこれからの世界経済や社会を考える上で欠かせない基本文献となることは間違いないでしょうから、興味のある方は読んでみてください。

では今日はここまで!

 

(追記1)

「週刊現代」の記事が図解入りでわかりやすいのでご紹介。後半にあるピケティ氏の講演後の東大生との質疑応答が抜群に面白いです(記事はこちら)。

「親は選べないが、貧しくても恥じることはない。いかに将来、世界に貢献できるかが大事。ただ格差によって教育の機会が阻まれてはいけない」というピケティ氏の言葉が心にしみます。

 

(追記2)

ピケティ氏の新刊「Capital and Ideology(資本とイデオロギー)」が2019年9月に本国フランスで発売されましたね(ニュースはこちら)。

超富裕層への富の集中が人類をダメにするという内容で、こうした最富裕層が死んだら相続税率を最大90%まで引き上げる、25歳になった市民に公的補助金を一律支給するなどの提案をしているようです。

すでに18か国に翻訳されることが決まっているそうで、英語版は2020年3月発売予定。日本語版はその後ですかね。待ち遠しいです。

 

(追記3)

『21世紀の資本』はその後、映画化もされました。監督はジャスティン・ペンバートン。ピケティも出演していますね。

ジャーナリストの池上彰氏は「本も読んでほしいところだが、まずは映画で現実を直視しよう。いくら働いても豊かになれない秘密を映画は教えてくれる」とコメントを寄せています。

公式ホームページはこちら

21世紀の資本映画化

 

 

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