前回、会社四季報の僕なりの活用方法、値上がり期待株の超簡単な見つけ方を書きました。記事は以下↓↓↓
投資初心者が四季報を活用するきっかけになればと思って書いた記事ですが、いろいろと反響をいただき、多少なりとも需要があったのかなあと手ごたえを感じています。
とはいえ、本当はもっと多面的な活用方法や見方があるのに、四季報のすごさや真の活用方法のごく一部しか伝えきれていなかったという忸怩(じくじ)たる思いも残っています。
そこで今回は、もっと四季報を深く読み込む方法や注目ポイントなど、読み方の参考になる絶対おすすめの参考書3冊をランキング形式で紹介していこうと思います。
総合評価 | |
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著者・出版社・出版年月 | 会社四季報編集部編(東洋経済新報社) 2020年7月 |
概要 | 80年の歴史のある四季報編集部唯一の公式ガイドブック |
おすすめポイント | 初心者から上級者まで学べ、活用できるヒントが満載 |
見ての通り、会社四季報を発行する東洋経済新報社、その編集部による唯一の公式ガイドです。手に取る前は「どうせブロック別に総花的に解説してるだけでしょ」と思いましたが、この本は初心者からベテランまで興味を持ってもらえるよう、見出しも含めてとても工夫しているのが感じられます。
たとえば、前回四季報の読み方の記事でも書いたように、比較的とっつきやすい「業績欄チェック」が前半に出てくる一方、「損益計算書のツボ」「自己資本比率と資金繰り」「ROE・ROAで経営効率を測る」など後半にいくほど業績や数字の見方が本格的になっています。
前半部には、年に4回発売される四季報の各号の違いと役割とか、会社の「特色」欄が毎号変化しているなど、何年も愛読している投資家でもあまり知らないような「四季報豆知識」が掲載されています。
あと、最終章の「お宝発掘の実践テクニック」も四季報の意外な見方がわかっておもしろいです。
たとえば「狙い目は地方発祥のオーナー企業」と題して、ファーストリテイリング(山口県発祥)やニトリ(北海道発祥)の例を紹介したり、「株価上昇を察知する『へー』と『あれっ』」の章では、従業員の年収変化から大化け株となった北の達人コーポレーションの例などを紹介しています。
新興の成長企業で重要となる「PSR(株価売上高倍率)」の説明があったので、「はて、四季報にPSRの記述あったかな?」と思って探したけど、肝心の四季報本体にはありませんでした。「PBR(株価純資産倍率)」とかあんまり役に立たない「最低投資額」(株価の100倍に決まっとる)とかいらないんで、まだ赤字の小型成長企業なんかはPSRをぜひ四季報本体にも載せてほしいです。
とはいえ、全体を通読すれば、四季報を隅から隅まで読み込めるようになること請け合い。四季報をまともに読めるようになる頼りになる参考書です。
総合評価 | |
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著者・出版社・出版年月 | 足立武志著(ダイヤモンド社) 初版2019年1月/改訂2020年7月 |
概要 | 公認会計士が読み方を伝授したベストセラーの「教科書」 |
おすすめポイント | きちんと投資家目線で業績数値の正しい見方を教えてくれる |
著者の足立氏は公認会計士兼個人投資家で、この本と『株価チャートの教科書』の2冊がベストセラーとなり、最近投資関連の記事などでよく名前をお見かけするようになった方です。
この本で四季報について語っているのは「第1章 情報満載!会社四季報を使い倒せ!」。
会計士の「教科書」らしく、四季報の各項目の詳細な紹介は省きつつ、業績の数値の見方を具体的に教えてくれています。
たとえば「成長株の特徴」という図解では、四季報のページを実際に載せ、見るべき欄を強調しながら、「売上高、経常利益とも過去3年以上増加+当期と来期も増加予想」の銘柄が成長株だと解説しています。
「前号との見比べ方」とか「過去10年の業績の推移を見よう」など、わりと面倒なことを要求してきますので初心者にはやや難易度高めかもしれませんが、具体的な見方がとてもためになります。
あと、著者の見つけた「会社四季報の裏ワザ」も面白い。「株主構成」からオーナー企業を見分けたり、「他の上場企業の子会社」である場合の注意点、さらに外国人投資家や投資信託の持株比率に注目して、その数値がすでに高い株は買わない方がいいという理由などが出ています。
このあたり、単なる会計士の視点だけでなく、投資家としての視点が入っているのがこの本の優れたところです。
総合点 | |
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著者・出版社・出版年月 | 渡部清二著(東洋経済新報社) 2018年6月 |
概要 | 四季報読みの達人が値上がり株を探すポイントを解説 |
おすすめポイント | 証券会社での経験から培った値上がり株発見の極意が満載 |
栄(は)えある第1位はこれ。著者は前記事でも紹介した、複眼経済塾代表(塾長)の渡部清二氏です。
四半世紀余りを経て100冊超の四季報を全ページ読破している超変人達人ですw。くわしい紹介は以下の「複眼経済塾」入学体験記事でどうぞ。
発行から3年で何度も版を重ねていることから、人気のほどがうかがえます。何より四季報を出している東洋経済新報社から出版されているのですから、信頼度は抜群です。
この本のすごいところは、プロのアナリストとして長年四季報を読み込んできた経験から、上がる株・下がる株・復活する株の特徴や有望株の見つけ方を自信をもって断言しているところでしょう。
渡部氏が注意してみている気づきのポイントは、
- 世の中や会社が大きく変化し、転換するようなコメント
- 突然伸び出す売上高などの業績
- チャートの転換
の3つ。ただ漫然と読むのではなく、この3点を念頭において読むだけで、必ず「なんだこれ!」「エッ!」と思う銘柄にぶつかる。これが自分だけのお宝銘柄発掘につながるんだそうです。
渡部氏直伝、10倍株を見つけ出すポイントは大きく分けて以下の4つ。
- 増収率が高い。4年で売上高2倍、年20%以上の増収率継続
- 稼ぐ力を示す営業利益率10%以上(平均は約7%)
- オーナー経営者で筆頭株主
- 上場5年以内
また、「PSR・PER・PBRの高さは気にしなくてもいい」など、株の教科書とは真逆のことを断言しているのも達人ならではです。
長年「低PER=割安株」の銘柄を探してきたけど、これは最もあてにならない。20数年の証券マン人生でこれが最も失敗だったと回顧し、この指標を「今、わたしは100%否定している」とまで断言しています。
PERはあくまで人々の「期待値」であり、これが高いほど逆に上がりやすいという側面もあるし、株価が上がるのに何より大事なのは、PERの低さより「カタリスト(上がるきっかけ)があるかどうかだ」とも語っています(僕もはげしく同意)。
こうした著者独自の投資哲学が随所に開陳されているのも本書の魅力の1つですね。日本株のファンダメンタルズ投資を勉強したい人にとってはかなり勉強になると思います。
渡部氏はほかにも『「会社四季報」最強のウラ読み術』(フォレスト出版)という黒本や、近著で『会社四季報の達人が教える 誰も知らない超優良企業』(SB出版)などの本も出しており、ブロック別の読み方や個別企業の情報などを掲載しています。これらも四季報読みの参考になるので、あわせて読んでもいいかもしれません。
総合評価 | |
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著者・出版社・出版年月 | 会社四季報プロ編集部編(東洋経済新報社) 季刊 |
概要 | 四季報の発売に合わせて季刊で発行されるビジュアルムック |
おすすめポイント | 人気テーマや好業績株を最初から500銘柄に絞ってくれている |
最後に、四季報の参考書というか、四季報銘柄選びの強力な助っ人も紹介しておきましょう。
書店で四季報を購入している人なら毎度目に付くのでご存じでしょうが、東証上場企業3800銘柄のうち500銘柄を厳選し、ビジュアルデータ満載で紹介したムック(雑誌のような本)です。
PER、PBR、高配当利回り、高ROE、営業増益率などの指標別に銘柄ランキングを教えてくれるのも銘柄選びに参考になりますが、僕が毎回みっちり読み込むのは、「注目テーマ」の特集記事です。
たとえば2022年夏号で取り上げている注目テーマは、「グローバル新体制」「グリーン」「リオープン」「政策・選挙」「DX&メタバース」など。
その前には「水素・アンモニア」「全固体電池」「レアアース」「国土強靭化」「空飛ぶクルマ」「暗号資産」などがテーマになっていました。
いま最も旬のテーマや今後トレンドとなっていくだろう将来性のある分野について、業界の動向や関連銘柄の紹介・分析をしてくれています。断片的な知識しかなかったテーマについて必要十分な情報をまとめてくれていて、これは毎回本当に役に立ちます。
銘柄別の記事では、さまざまな条件で選別された個別株の情報が、チャートやグラフを駆使して見やすくまとめられています。中身はこんな感じ。
四季報が無味乾燥な生データを提供している「銘柄辞典」だすれば、こちらはいい銘柄・旬の銘柄だけを厳選してビジュアル化した500社の「銘柄図鑑」といったところ。
僕は四季報で見つけた気になる銘柄をこの「プロ500」でチェックし、業界分析や記者の目などのコラムを読んでから、購入するかしないかを決めるようにしています。
ぶあつい四季報を読みこなす自信のない人は、まず「プロ500」を買って、いろんな視点で多角的に銘柄分析することを学ぶほうがいいかもしれません。
まとめ 四季報の読み方を深化させて儲かる銘柄選びを!
さて、四季報のおすすめ参考書ランキング3冊+1、いかがだったでしょうか。
ここでは紹介しませんでしたが、
『億り人がやっている 会社四季報&株探のスゴい使い方』(宝島社)
『伝説の編集長が教える 会社四季報はココだけ見て得する株だけ買えばいい』(東洋経済新報社)
などもおすすめ。投資スタイルの異なる億り人投資家や初代四季報オンライン編集長がそれぞれどんなふうに四季報を読むのかが興味深いです。
しかしながら、四季報を読み込むための基本参考書としては、やはりランキングに挙げた3冊がベストかなと思います。
中でも渡部清二氏の「赤本」は、四季報の読み方を学びながら、同時に上昇銘柄発掘の達人の「哲学」も学べるのが何よりすばらしい点です。
どれを参考にするかは投資経験やスタイルに応じて人ぞれぞれと思いますが、お宝銘柄探しの宝庫である四季報の読み方をぜひとも深化させ、豊かな投資ライフを送ってほしいと思います。
- 第1位 『会社四季報の達人が教える10倍株・100倍株の探し方』
- 第2位 『ファンダメンタル投資の教科書』
- 第3位 『会社四季報公式ガイドブック』
- 番 外 『会社四季報プロ500』