今日は投資本の古典的名著、『バビロン大富豪の教え』を取り上げます。
当ブログではこれまで、日本人大富豪の伝記的な記事を2本書いて、その蓄財・投資術を学んできました。安田善次郎さんと本多静六さん。
そして、大富豪の語る資産形成術としては『金持ち父さん貧乏父さん』も内容をくわしく紹介しました。
今回紹介する『バビロン大富豪の教え』はこの大富豪の蓄財術シリーズの第4弾です。
時代はぐぐっとさかのぼり、古代バビロニア王国を舞台に大富豪の蓄財術を描いた本ですね。
一見、現代人の投資や蓄財とは関係のない遠い世界の話にも思えますが、実は執筆したのは100年前のアメリカ人(暴)。
彼が古代バビロニアの大富豪や金貸し、奴隷たちの物語に仮託してお金の大切さや蓄財の方法を寓話的に語った本というわけです。
後ほど本文でも紹介しますが、日本では漫画版もベストセラーになっていますね。
本の要約とまとめポイントは以下の通り。
- 実は100年前に書かれたお金と蓄財術の本
- 著者は元軍人で出版社を経営するアメリカ人
- 古代バビロニア王国の都を舞台にしたお金にまつわる物語集
- 大富豪アルカドや金貸しが貧しい人々に知恵を授ける
- 10分の1貯蓄方法など「黄金の7つの知恵」が核
- 奴隷からの決死の脱出など波乱万丈な物語も
- 単に蓄財テクニックを記した本にあらず
- お金と幸福についての普遍的なテーマに共感できる
ではじっくりポイントを解説していきましょう。
目次
書いたのは100年昔のアメリカ人社長
最初にも触れましたが、本書は古代バビロニア王国の書物が現代に伝わったものではありません。
なにせ古代バビロニアは紀元前2000〜紀元前500年ごろにあった古〜い国で、まだ粘土板に楔形(くさびがた)文字を刻んでいた時代です。
本書を書いたのは実は20世紀のアメリカ人。
元軍人で出版社の社長であったジョージ・S・クレイソン(1874〜1957)なる人物が、今から約100年近く前の1926年に1話ずつパンフレットに発表していったものです。
それが金融関係や会社経営者たちの評判となり、やがて何百万という読者を獲得するに至ったようです。
本書の物語が古代バビロニアのどの王の時代の話なのか、実在したモデルがいるのかどうかなどの情報は一切ありません。
だから本書は、正しくは古代バビロニア王国を舞台に描かれたフィクションというべきでしょうね。
交易と金融で発展した古代都市
古代バビロニアは現代のイラク南方、メソポタミア文明が勃興したチグリス・ユーフラテス川下流域に栄えた国です(下図はWikipediaより。色の濃いところがバビロン)。
肥沃な土地で農業が発達した一方、資源が乏しかったことから周辺の国や民族との交易が盛んになり、早くから経済活動が活発に行われていました。
その経済活動を背景に、バビロニアには法律、文学、宗教、芸術、数学、天文学なども発達。その首都バビロンは古代国家の中でもっとも栄えた都市の1つだったようです。
バビロニアでは市民の蓄財や私的経済が認められていました。市民は働けば働くほど報われることになります。だから経済がますます発展したというわけです。
信用取引による金貸し、すなわち「金融」という仕組みが生まれたのもこのバビロンだったとされています。
つまり、この時代にはすでに現代にも通じる金融経済の原理が存在しており、したがって蓄財法があってもおかしくないと作者は考えたのでしょう。
ちなみにこの地を初めて統一したのが、かの有名なハンムラビ王(在位・前1792〜前1750)ですね。世界で初めて成文法を整備した王様です。
なぜうちにはお金がないの?そうだ!金持ちに聞きに行こう!
本書の中身をごく大雑把に要約すると、
経済的繁栄を誇った古代都市バビロンで、巨万の富を築いた大富豪アルカドや知恵者たち、貧しくもひたむきに生きる人々や借金苦から奴隷に身を落とした人々らが登場し、富と幸福をめぐるさまざまな人生ドラマが展開。物語を通して古代から変わらない普遍的な蓄財術とともに、富とは何か、幸福とは何かを伝える投資本の古典的名著。
とまあこんな感じでしょうか。
「繁栄と富と幸福はいかにして築かれるのか」という副題が本書にはつけられています。
本書は全部で9つの物語から成っています。
大半の物語は、とにかく金に困っている人、または金を稼ぐ甲斐性のない人が登場し、その彼らにお金持ちの知恵者らが自らの経験を語りつつ、蓄財の知恵や幸福になる道を教える、という構成になっています。
金に困っている人は立場もいろいろです。働き者だけどお金がたまらない職人、借金を踏み倒して奴隷に成り果てた商人、働くなんて奴隷のすることだと思っているお坊ちゃんなどなど。急に手にした金をどうしたもんか困っている人もいます。
9話あるうち前半の4話は大富豪アルカドを中心に展開します。
その前半部の登場人物が、戦車職人のバンシアです。
あ、戦車って言っても現代人が思い浮かべるあの戦車ではないですよ。まあ裕福な人が移動したり、いざとなったら戦に赴いたりするための馬で引く乗り物というイメージ。
画面下の箱に車輪をつけたみたいな乗り物を想像すればいいと思います(画像は大英博物館の石碑に描かれたシュメール人の戦車)。
この戦車職人のバンシアがある日、自分は朝から晩まで一生懸命働いているのにどうして家は貧しいのか、いったいお金を持っている人と自分は何が違うのか、という疑問を抱きます。それを親友の楽士コッピに打ち明けるところから物語が始まります。
2人はその話をしながら、昔からの友人であり、バビロン1の大金持ちと言われるアルカドのことを思い出します。
アルカドは自分たちと同じ商人の子で、家に財産があったわけではない。スタートラインはそんなに変わらないし、自分たち以上に働いているとか商才が備わっていたようにも思えない。なのになぜあんなに金があるんだ。おかしいじゃないか。と言うわけですね。
そこで2人は、いっちょアルカドにどうして金持ちになったのか聞いてやろう、と意気投合し、「話を聞くだけなら金はかからん!」とばかり、仲間をぞろぞろ引き連れてアルカドのところに出かけます(ここまでがプロローグ)。
蓄財の第一歩は「稼(かせ)ぎの一部をとっておく」こと
バンシアたちが訪ねてくると、アルカドは快くみなを招き入れます。
でも礼儀をわきまえない者たちは、かなりずけずけとアルカドに尋ねました。
みたいな。いや、さすがにそんな乱暴な言い方はしてませんけど、、、
アルカドはこれを聞くや、ポツポツと語り始めます。彼もまた、貧しかった若き日に金貸しのアルガミシュに金持ちになる方法を尋ねていたのでした。
アルガミシュはアルカドに大急ぎの仕事(粘土板の書写)を依頼していましたが、とても普通にやっていたら間に合いません。そこでアルカドは、大急ぎで予定に間に合わせる代わりに、お金持ちになる方法を教えてくれと頼みます。
アルガミシュはそれを承知します。そしてアルカドは徹夜仕事で粘土板を完成させました。
約束を守り、アルガミシュがアルカドに伝えた知恵とはこうでした。
「わしが富への道を見つけたのは、稼いだものはすべてその一部を自分のものとして取っておくことを心に決めた時だ。おまえとて同じことができるはずだ」
「たったそれだけですか」とアルカド。
「羊飼いの心を金貸しの心に変えるのにはそれだけで十分だったよ」アルガミシュはそう答えます。
ちょっとここで注釈。「金貸し」というとなんとなくうさんくさくて意地悪で、高い利息で金を貸し付けて人々を苦しめる、みたいなイメージありませんか?
でも、古代バビロニアでは(というかこの本では)金貸しは自らの才覚で金を稼ぎ、それを元手にさらに金を稼いだ成功者であり知恵者という存在として描かれています。
その証拠に、本書では物語の要所要所で知恵のある金貸しが登場し、悩める者たちに正しい道を示そうとします。アルガミシュもそうした1人ですね。
ためたお金が別の金を稼ぎ出す
さて、「一部を自分のものとして取っておけ」とはどういうことでしょうか。
それは、毎月の稼ぎから食費や服代、酒代、借金の返済などいろいろ支払いをするけれど、これらに全部使ってしまうのではなく、必ず一部を自分のために残しておけ、ということ。つまり「貯金しろ」って事ですね。
どんなに稼ぎが少なくても必ず10分の1を取っておくように、とアルガミシュは助言します。10分の1蓄財法は以下の記事で取り上げた安田善次郎翁と同じですね。
「10年ためるとどうなる?」と知恵者に尋ねられ、アルカドは「1年分の稼ぎがたまる」と答えます。
稼ぎの10分の1×12ヶ月×10年=12ヶ月分(1年分)という計算ですね。アルカドかしこい!
でもアルガミシュは「それは真実の半分でしかない!」と言います。
「おまえが貯める金は1つ残らずおまえのために働く奴隷なのだ。その金が稼いで来てくれる銅貨も一枚残らずおまえのために稼いでくれる、まさに黄金の子供なのだ」と。
答えは「利息」「利子」ですね。
お金はだれかに貸したり出資することで利益をもたらします。自分が働く代わりにお金が稼いでくれる、いわゆる「不労所得」となります。
さらに言えば、この利子利息自体も、新たな利子利息を産んでくれます。これが「複利」です。
この「複利」パワーこそ、お金持ちになるもっとも大事な知恵です。アインシュタインが人類最大の発見と言い、バフェットおじさんが雪玉ころころとたとえたあれです。くわしくは以下の記事をどうぞ。
アルガミシュは言います。
「富というものは一本の樹と同じく、小さな種から育つ。おまえが貯める最初の一枚の銅貨が種となって、おまえの富の樹が育つのだ。種を植えるのが早いほど、樹は早く育つ」
若いうちに小さなお金からコツコツと貯めていくことが財産を築くもっとも早く着実な方法だ、というわけです。
この教えを忠実に守ったアルカドは、やがてアルガミシュの信頼を得て事業の後継者となり、ついに国の外にまで名前をとどろかす大金持ちになっていったのでした。
富を築く不滅の法則「黄金の7つの知恵」
次の第2話では、アルカドが王様から直々に、富の蓄え方や増やし方をバビロン市民に教えてやってくれと頼まれます。
そこで選ばれた100人の教師を一堂に集め、蓄財術の講義をします。
それが「富をもたらす黄金の7つの知恵」。本書の柱ともいうべきお金の哲学ですね。
その7箇条を以下にまとめておきます。
- 財布を太らせることから始めよう
- 自分の欲求と必要経費とを混同するべからず
- 貯めた資金は寝かさずに増やすべし
- 損失という災難から貴重な財産を死守すべし
- 自分の住まいを持つことは有益な投資と心得よ
- 将来の保障を確実にすべく、今から資金準備に取りかかるべし
- 明確な目的に向かって、自己の能力と技量を高め、よく学び、自尊心を持って行動すべし
ちょっとわかりにくいので、もうちょっと現代風にアレンジしてみます。
- 稼ぎの10分の1を貯金
- 無駄遣いをなくせ
- 貯めた金は預金せずに投資に回せ
- 危険な投資に手を出さず、元本をしっかり守れ
- 自宅の購入も投資のうち
- 自分年金も作れ
- ファイナンシャルリテラシー(お金の知識)を高めよ
5番目の知恵に関してはちょっと異論を挟みたくなりますが、そこはアメリカ人の発想なので大目に見ておくことにします。
7番目については、黄金を守り増やすためにはそれに長(た)けた人が認める方法をとりなさい、という知恵も後で語られます。要は素人の意見に惑わされることなく、きちんと投資で成功した人の意見に耳をかたむけなさいということ。
これとってもとっても大事です。投資初心者は何も知識がないまま、友人知人隣人(つまり素人)のもうかった話とか銀行・証券会社の窓口の職員の口車にのせられて、たいして上がりもしない株に付き合わされたり、手数料のバカ高い詐欺的な投資商品に引っかかったりして財産を失っていくのです。
そうならないためには、最低限の投資の知識を身に付けなくてはいけません。ここを甘く考えたり、学ぶための投資をケチったりすると、結局資産を築けずに終わります。
奴隷人生から決死の脱出
この後、第3話ではアルカドと講義受講生たちの「白熱教室」があり、第4話ではアルカドの息子ノマシマの試練の旅の話が続きますが、詳細は割愛します。
いずれも前掲の「7つの知恵」をベースにした話となっています。
そして後半では、アルカド以外の人物が登場し、ある種の短編小説オムニバスのように物語が展開していきます。
ここでは一番印象に残る「奴隷からの脱出」の物語を紹介しておきましょう。
奴隷といっても、「おれは会社の奴隷だよ」みたいな比喩じゃありません。古代バビロニアには本当に奴隷制度があり、一度奴隷に身を落とした者は二度と元の市民(=自由人)には戻れませんでした。
親の借金のカタに子供が売られ、奴隷になるなんてこともあったようですね。
ラクダ商人ダバシアの人生を描いた第7話は、そんな奴隷に身を落とした男の波乱万丈の物語です。
まず登場するのは、方々に借金をこさえて返済できず、食事も満足にできずにいるタルカドという男です。
この男が運悪く、金を借りた富豪ダバシアに往来ででくわします。ダバシアは「はよ金返せ」とせっつきますが、タルカドは「ツキがなくて」と返済できないいいわけを並べます。
するとダバシアはタルカドを強引にメシ屋に連れ込みます。
そして腹の空いたタルカドを前に、自分だけおいしい肉料理を食べ始めます。「空腹になれば頭がさえてくるだろ、けっけっけ!」みたいな。
ダバシアは飢えたタルカドに食べ物をごちそうする代わりに、自らの壮絶な人生を語り始めます。
若い頃、大富豪ダバシアはタルカドと同じダメ人間でした。
自らの収入の枠を超え、借金をして自分の物や妻の服・宝飾品といったものを買っていき、いつしか返済ができなくなるほどに借金がふくれあがってしまったのです。
そしてバビロンを逃げ出し、砂漠を流浪し、盗賊仲間に入って悪さを重ね、とうとう捕まってしまいます。
死罪こそ免れたものの、ダバシアは自由人の地位を剥奪(はくだつ)され、奴隷としてシリアの族長に売られました。
そこで、族長の奥方のラクダの世話係となります。
ダバシアは奴隷に身を落としてからも、いつの日かバビロンでお金を借りた人たちにきちんと返済したいと願っていました。
その思いを聞いた奥方が、こんなことを言い聞かせます。
「おまえの借金はおまえにとっての敵のはず。借金のせいでバビロンを追い出されたのですからね。敵を放っておいたために相手はどんどん強くなって、おまえの手に負えなくなったのです」と。
さらに追い討ちをかけるように、
「おまえが人間の魂を持って敵と闘っていたならば、おまえはその敵を屈服させ、周りの人たちから尊敬されるようになっていたでしょう。ところがおまえは敵と闘うだけの勇気がなかった」
だからシリアで奴隷なんかに身を落としたのだ、と奥方は言います。
この手厳しい意見に、ダバシアは返す言葉がありませんでした。
ところがこの奥方、自分も族長の奴隷みたいなもんだと嘆いていて、ひそかにダバシアの境遇に同情を寄せていました。そこでダバシアに策略を授け、もう一度「自由人」となるためにバビロンにお逃げなさい、とチャンスを与えます。
とは言え、奴隷が主人から逃げたら死罪は免れません。
ダバシアは決死の思いでこの奥方の策に乗り、族長の目をごまかして逃げ出します。
やがて広大な砂漠に差し掛かり、灼熱地獄のような砂漠を飲まず食わずで歩いていきます。体力は限界に達し、力尽きて倒れ、「もうここで死ぬのか」と一度はあきらめかけます。
しかし、彼は奥方の言葉を思い出し、気力を振り絞って立ち上がるのでした。
彼に最後の力を与えたのは、奴隷となっても失わずにいた「自由人としての誇り」でした。
そしてダバシアは、死線を超えてなんとか生きてバビロンに戻ります。そこから改心し、金貸しの知恵を借りて方々の借金を少しずつ返済し、同時に自らの財産も増やしていきました。
ダバシアがこの「奴隷からの決死の脱出体験」を話し終えると、若いタルカドは目をうるませ、「あなたは私に今後の人生を与えてくださいました。自分の中に自由人の魂がわきあがってきました」と、改心したのです。
さて、この壮絶な物語の教訓はいったいなんでしょう。
本書『バビロンの大富豪』は最後の第9話も「奴隷からの脱出」の話です。この最終話が僕は本書の中で一番好きなんですが、長くなるしネタバレになっちゃうので割愛します。
ひとことで言うと「幸福とは金ではなく、労働の喜びを知ることにあり」という内容です。興味ある方はぜひ読んでみてください。
バビロンの借金返済法に救われた考古学者
第7話と第9話の2つの話に挟まれた第8話では、舞台が急に現代に飛びます。
ここでの主役は英国の考古学者シュルーヴェリィなる人物です。彼はバビロンの遺跡から発掘された粘土板5枚の解読を友人から依頼されており、その内容を手紙の形で依頼主に送ります。
その粘土板に記されていたのが、第7話に登場したダバシアの借金返済記録だったのでした。
実はこの考古学者は大きな借金を抱え、生活が破綻(はたん)しかけていました。そこで彼は、粘土板を解読するかたわら、そこに記された古代バビロニアの借金返済と蓄財方法を自ら実践していったのです。
命からがらバビロンに生還したダバシアは、金貸しメイソンの知恵を借り、方々から借りた金を少しずつ平等に返しつつ、同時に蓄財もしていきます。
5枚の粘土板に記された返済・蓄財の方法とは、だいたいこんな内容でした。
- 収入の7割で暮らし、残る2割りを返済に当て、1割を自分のために蓄える
- 借金した人物と金額を全部書き出し、それを全員に見せて分割返済にしてもらう
- 「いっぺんに返せ」とおどされても全員平等に分割で返済していく
- この間に事業にもお金を回し、収入が増えたらそれに応じて返済額も増やす
- 苦しくてもこれをかたくなに続けて返済を完了する
ダバシアはこのメイソンの知恵のおかげで、計画的にお金を返しながら、商売に必要なお金もためていきます。そして、何ヶ月かして返済が進み、自分の手元にもお金ができた頃には、何年ぶりかで心がすっと軽くなったと記しています。
そして彼は30ヶ月目にとうとう全部の借金の返済を終えます。その頃には、お金を貸した人たちからは賞賛され、「いっぺんに返せ」と口汚くののしっていた老人からは「おまえさんのためならいつでもまた用立てる」と言われるまでになっていました。
ダバシアはその後、バビロン屈指の富豪になりました。
奴隷に身を落とした苦しみ、そして自由人の身分を取り戻した誇りが、彼を変えたんですね。まあ逃げ出してまた奴隷に戻るよりこの返済生活のほうがずっと楽だったわけですが、、、。
さて、粘土板を解読した現代の考古学者シュルーヴェリィは、そこに記された「10分の2借金返済・10分の1蓄財法」を自ら実践し、破綻しかかった人生から生活を立て直します。
そして、解読を依頼してきた友人に感謝の手紙を送り、「遺跡でダバシアの霊にあったらぜひ礼を言っておいてほしい」という言葉で物語をしめくくっています。
この古代バビロンの借金返済法が現代にどこまで有効かはわかりませんが、とても現実的で堅実な方法のように思えます。
現在債務に苦しんでいる人がいたら、「7割生活、2割分割返済、1割貯金(投資)」を実践してみてはどうでしょう。バビロン大富豪の知恵に救われるかもしれません。
収入の7割で暮らすのは決して楽ではないかもしれませんが、この考古学者は家計を見直し、家賃の安い部屋に移ったり、無駄遣いをやめるといった工夫もして実践したようです。
家計の見直しについては僕も経験談をこのブログで書きましたが、本当に大事です。
急に現代に話が飛ぶ第8話は、おそらく古代バビロニアの知恵が現代でも通用するということを描きたかったのでしょう。
フィクションの中に現実を混ぜ込んでリアリティを出そうというメタフィクション。いや、考古学者の話もフィクションだから、フィクションの中のフィクションという容れ子構造というべきか。
現代日本に漫画版でよみがえった
原作は100年近くも前に書かれた物ですが、2019年に日本で漫画化され、20万部突破のベストセラーとなりました。
中身はこんな感じ。活字より迫力が伝わりますね(画像はAmazonの販売ページより)。
原作では最初に登場するバンシアは大人ですが、漫画では少年。仕事は戦車職人ではなく剣をつくる武器職人の息子と設定が変わっています。
漫画としてスムーズにストーリーが追えるよう、読者がより感情移入しやすいよう、いろいろアレンジしているのでしょう。このあたりは漫画王国ニッポンの面目躍如という感じです。
ちなみに、N田あっちゃんが動画で紹介しているのはこの漫画版の方です。
さすが元芸人(?)だけあって、それはそれは見事な語りと小芝居たっぷりで魅力を伝えています。構成も見事で飽きさせません。
まとめ☆単なる投資テクニックの本にはない人生の深み
『バビロンの大富豪』の紹介、いかがだったでしょうか。
お金の名著として百年近く読み継がれてきたわけですが、おそらくそれは、単に蓄財のテクニックを伝えるだけではなく、物語に描かれる人間模様に読者が自分の姿を重ね合わせて共感したり、人生の深みを読み取ったりするからではないでしょうか。
人とお金の関係は、古代も現代も変わらない普遍的なテーマなのです。
最後に物語に登場する人物を一覧にしておきます。なんの役に立つのかわかりませんが。
- バンシア 戦車職人
- コッベ 楽士。バンシアの友人
- アルカド バビロンの大富豪。王の国庫にも金を貸し出している
- ノマシマ アルカドの息子。放浪と苦難の末に富をつかむ
- アルガミシュ 金貸し。アルカドに蓄財の知恵を授ける
- ロダン 槍職人。王から金50メダルを授かり、それをどう運用するかで悩む
- メイソン 金貸し。富豪。ロダンに対し人に金を貸す意味などの知恵を授ける
- バンザル 城壁警護の老戦士
- ダバシア 富豪の駱駝商、元奴隷
- タルカド 債務の返済困難に陥っている男。ダバシアの話で心を入れ替える
- シャルゥ・ナダ 大富豪の大商人、元奴隷
- アラド・グラ シャルゥの恩人であり共同経営者
- ハダン・グラ アラドの孫。仕事嫌いの若者。シャルゥが面倒をみている
- シュルーヴェリィ 考古学者。ダバシアの粘土板を解読。借金で生活苦
- 100年も前に書かれたお金を投資の本
- 著者は元軍人で出版社を経営するアメリカ人
- 古代バビロニア王国の都を舞台にしたお金にまつわる物語集
- 大富豪アルカドや金貸しが貧しい人々に知恵を授ける
- 10分の1貯蓄方法など「黄金の7つの知恵」が核
- 奴隷からの決死の脱出など波乱万丈な物語も
- 単に蓄財テクニックを記した本にあらず
- お金と幸福についての普遍的なテーマに共感できる
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