2021年1月28日追記:
この記事は2020年3月中旬のコロナショック暴落直後に書き始めたものです。ニュース的には古くなってしましましたが、暴落時は正しくポジションを手仕舞うことがいかに大切かを解説した、わりと使える内容だなと自負しています。銘柄によっては50%暴落も起こりうる世界です。含み益が減るのはまあ許容できるとして、損失がふくらむのは最悪です。この記事を読んで考えてみてください。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で株式市場は暴落の嵐の真っただ中ですね。
みなさんは損切りをしましたか?それとも現物だからいいやと損切りしないでガチホですか?
すぐにはできなかったけど途中で含み損の大きさに耐えられなくなって損切りした人もいるでしょうね。
今日はこの大暴落時の損切りについて自分なりに考察した結果を書いてみました。
結論から言うと、含み損に耐えられるメンタルがあるならガチホでもいいけど、早く損切りして再スタートを切った方が心も軽く、資産形成のスピードも速くなりますよ、という話です。
Contents
バイ・アンド・ホールドは本当に正しいのか
長期投資家の皆さんは、株は必ず上がってくるから、Buy&Hold(バイ・アンド・ホールド=買ったら売らずにずっと持ちっぱなし)でいいと考えているかもしれません。
もちろん、それはある意味正しいです。
下記は米国S&P500指数の1950年から近年までの超長期チャートです(Wikipedia英語版「S&P500」より)。世界一の投資家バフェット氏をはじめ、多くの投資家が信頼を寄せ、これを目標、ベンチマークとする投資信託も多いインデックスです。見事に右肩上がり。

このブログでも何度か紹介しているジェレミー・シーゲル教授も、株式市場は過去200年常に成長し続けていて投資先として最も優れたパフォーマンスを示していることを証明しています。
下図はシーゲル教授の名著『株式投資』にある有名な「株式と債券の実質トータルリターン」のグラフです。1801年に1ドルを株に投資していたら、インフレ率を加味しても75万5,000倍に増えたというわけです。
日経平均も、かなりイレギュラーなバブル期とその崩壊以降の30年デフレに目をつぶり、全体を薄目で眺めれば(笑)、成長はしているのです。

リーマンショック後の最安値から昨年高値までなら約10年で3倍近くになっていました。

これらの株価のパフォーマンスを見る限り、長い目で見れば幾多の暴落も小さな落とし穴に過ぎず、指数は力強く右肩上がりで上昇していってるのがわかります。
日本や世界の経済が拡大成長していく前提であれば、暴落しても放っておけばいつか値を戻し、暴落時を追い抜いていくでしょう。
そんな話をS&P500の紹介記事でも書きました↓↓↓

個別株も同じことで、先々の成長が見込める銘柄ならやはり暴落は一時だけと考えるのがバリュー・グロース投資の王道です。
特に短期トレードに自信のない人が、暴落で被った損失をリカバリーしようと今のジェットコースターみたいな相場に参戦しても、おそらく傷口を広げるだけです。
であれば、死んだふりして持ち株を塩漬けにして、嵐が過ぎるのを待つのが得策なのかもしれません。

ただ、資産形成のスピードという意味では、こうした大暴落時のBuy&Holdは必ずしも正解とは言えないのではないか、というのが今回考えたことです。
それを次の章で見ていきましょう。
▲10~20%の暴落は当たり前、▲30~40%もわりとある
次の図は過去20年の日経平均の推移と代表的な株価急落およびその後の長期下落期間をまとめたものです(Invesuter.comでぐれあむ勉作成)。
オレンジがピークから底まで20%以上の下落、赤が同30%以上の下落を示しています(3か月以内かつ上昇率10%以内の反動は無視)。

下の目盛りは2年ごとなので、多くは半年~1年の下落で、リーマンショック(金融危機)のみ約2年にわたって下落が続いたことがわかります。
これを見て気づくのは、半年以上にわたって20%以上下落する暴落はわりと頻繁に起きているんだなあ、ということ。
リーマンショックのような2年で60%近くも下落する暴落はレアケースとはいえ、バブル崩壊からいろいろなことが重なって続けざまに30%以上下落なんてことも90年代終わりから2000年代初頭にはありました。体験した人には地獄だったことでしょう。
リーマンショック後の大底で買った人ならたしかに長期では株価は上がっていますが、もしリーマン前の高値でつかんでいた人は、13年かけてようやく含み益が出るようになっていたのに、今回の暴落でまた一気にマイナスに転じたことになりますね。
しかも、まだ長期下落の端緒にすぎない可能性だって十分あるわけです。
「30%下落したから売りはここらで収まる」というアナリストの意見もちらほら目にしますが、ちょっとおかしな話です。
リーマンショックのような金融ショックの連鎖は元凶である金融業界を支えることで止められましたが、新型コロナウイルスはまだ世界中で感染拡大中で、相当広い分野の企業活動に長期にわたって影響が出るものと予想されます。
あらゆる国から次々と悪い指標が出てきて、企業の決算もどんどんひどくなります。それが明らかになるのは1~3月期決算分は5月以降、4~6月期決算は夏以降です。
底はまだまだ先かもしれない、という根拠は以下の緊急投稿記事でも書きましたのでご参考に↓↓↓

実は長期だからこそ損切り力で差がつくことも
辛抱強く上がるのを待つのは長期投資では当たり前のことだし、働いている方なら株価が低迷している間に入金投資法(要するに働いて稼ぐお金を定期的に投入していく)で株数を増やし、上昇局面に入ったらドルコスト平均法の効果で一気に資産を伸ばすこともできるでしょう。

でも、たとえ含み損の状態とはいえ、大暴落でお金を失うと困ることが出てきます。
それは、資産形成のスピードが落ちるということです。
資産は複利で増えていきます。その複利は、資金の多寡で大きく異なってきます。資金は大きければ大きいほど、複利の力で「雪だるま」が早く大きくなります。

よく考えたら当たりまえですよね(複利パワーについては以下の記事をお読みください↓↓↓)。

つまり、資金を失うということは、同時に複利の力、すなわち資産を早く増やす力をも失ってしまうということなのです。
つまり、こうです。
いま元手100万円を2倍の200万円にする目標を立てたとします。S&P500のETF(例えばVOO)に全額投資した場合、リターンは年平均9%(この数字の根拠についてもS&P500の記事を参照のこと)。
下の表左が100万円スタートの資産推移です。複利計算すると8~9年で元利合計が2倍の200万円となります(複利計算はCASIOのKe!sanサイトを使用)。

ところが、投資初期に大暴落で30%損失してしまった場合はどうなるでしょう。元手が70万円になったところからのスタートなので、資産推移は上記右の表になります。
なんと、年利9%もあるのに、30万円減っただけで200万円にするのに12~13年もかかってしまいます。
その差4年!
では同じ期間投資する場合、どう資産が変わるのかを場合分けを増やしてシミュレーションしてみましょう。
暴落時に損切りする人と損切りしない人の差は、、、
こんなシミュレーションをしてみました。
4人の投資家A、B、C、Dがそれぞれ資産100万円を元手に株投資を始めることになり、4人とも年平均7%リターンの同じ銘柄に投資することにしました。
ところが不運にも、投資を始めてすぐ「●●ショック」が発生し、株価が30%も大暴落してしまいました。その底値で4人が同時にスタートしたところ、10年たったときに今度は「▲▲ショック」が起こり、またしても30%暴落しました。
- Aさんはとても慎重な人で、すぐに株を買わなかったおかげで最初の暴落を免れ、さらに10年目もたまたま利確して現金に換えていたため、暴落に遭わずに済みました。
- Bさんは含み損が10%超えると損切りするルールを決めています。10年後の暴落でも同じマイナス10%で損切りしました。
- Cさんは長期投資なので最初から損切りしないと決めています。なので、最初の年も10年目もともに30%資産が目減りしました。
- Dさんは欲を出して、現物1:信用1の信用二階建て(現物+信用で同じ銘柄を買うこと)をしていたためダブルで暴落をくらい(マイナス60%)、信用分を損切りして元手40万円でスタート。そこから現物1:信用1を続け、10年目も再びダブルで暴落をくらい、さらに二階建て投資を続けました。
さて、このA・B・C・D4人の投資家が20年投資を続けた結果、資産はどうなったでしょうか。
公平を期すため、10年目に含み益で利確できた人は、含み益の20%の譲渡税を払った後の額から再スタートとします。Dさんは現物7+信用7で年利14%運用とします(ほんとはもっと計算が複雑なんだけど)。
このシミュレーションの結果が以下のグラフです。

上記グラフのバックデータはこうです。

どうですか、この資産形成の格差!
- Aさんは税金以外で減らすことなく、20年で資産を3.5倍に増やしました。
- Bさんは2回の大暴落で10%ずつ減らし、利確で税金も払いましたが、最終的に3倍近くに資産を増やすことに成功しました。
- CさんはBuy&Holdを貫いた長期投資の鑑です。その結果、20年で2倍近く資産を増やしました。が、AさんとBさんにはかなり離されましたね。
- Dさんは、大暴落2回でかなり減らしていますが、リスクを大きくとっている分、最後はCさんを抜いてます。
投資資金の多寡が格差をさらに広げていく話は、トマ・ピケティ『21世紀の資本』と「r>g(アール大なりジー)」の記事でも紹介しました。資本主義は富める者がますます富んでいく格差社会を生むシステムなのです。

それはさておき、株式投資をしていてAさんのように暴落で傷ひとつ負わない人はまずいないと思います。多くはBさん、もしくは長期投資のCさんのケースが多いのではないでしょうか。
含み損10%で損切りしたBさんは30%下落にも耐えたCさんより、20年で約1.5倍も資産を増やすことができました。これをただのシミュレーションと言いきれるでしょうか。
DさんがCさんを抜いたのはちょっと意外でしたが、やはりリターンが大きい分、複利効果も大きいってことでしょう。ただし、20年目にまた60%の暴落を食らったら振り出し以下の88万円に減りますから、リスクが大きすぎますね。

(結論)暴落時の損切りの早さが資産形成のスピードに大きくかかわる
損失を確定していなくても含み損は損失。やはり元手が失われた分、資産形成のスピードは失った額に応じて遅くなっていくことがおわかりいただけたでしょうか。
いくら長期で見るといっても、たまに起きる大暴落のたびに大きく資産を失っていては、資産形成はままならないと思うのです。
しかしそんなことより、暴落による大きな含み損にはもっと切実な問題があります。
底に着くまでずっと減らない、あるいは増え続ける損失を眺め続けていると、けっこうメンタルがきつくなってくるのです。
投資初心者や大きな損失を出したことのない方は、その状況になってみないとわからないと思いますが、損失額が大きいといつもイライラしたり不安を抱いたり、ついつい何かにあたり散らしたくなったり、自暴自棄になったりと冷静ではいられなくなります。
僕はかなり冷静な方だと思いますが、それでも短期間で100万、200万と含み損が増えていったときは、パソコンのモニターとマウスにやつあたりして盛大に壊したこともありました。
さらに、翌日の値動きがどうにも気になって夜も眠れなくなることもありました。ここまで追いつめられると結構ヤバいです。
相場には、売りは迷うことなく手早くせよ、という意味の格言がいくつも存在します。
「迷いが出たら売れ」「しまったは仕舞え」「買いの迷いは見送り、売りの迷いは即刻売り」などなど。
で、損失に陥ったとき、さらに下がるかもと不安に駆られるようなら売るべきです。「引かれ玉(ぎょく)は投げよ」「眠れぬ玉は持つな」。恐怖におののくようなポジは百害あって一利なしです。
夜は寝たほうがいいよ

結論を言えば、こんな苦行に耐える必要などまったくなく、とっとと損切りして損失を確定してしまった方が楽になれます。
含み損はもちろん時間が経てば元に戻ることもありますが、どっちみち損切りして残ったお金がその時点での資産なわけですから、そこでもう一度買い直しても同じことだし、そこから上がっていく場合は含み益になるので、気持ちが全然違います。
今回のコロナショックの暴落では、おそらく短気で急にリバることもあるかもしれませんが、本当の回復には相当時間がかかるはずです。
損切りしたおかげで買い場を逃したら、などとあせる必要は全然ないし、残ったお金で安くなった株をまた買えばいいし、そこから下がったら今度は含み損の小さなうちにためらうことなく損切りができるようになっています。
何よりも、大きな含み損を毎日見ずに済むし、これ以上損失がふくらむこともありません。お金には変えられない無上の安らぎが得られるのです。
ま、命まで取られたわけじゃないしな(←みたいな気持ちになる)

もちろん、暴落やリセッションの原因や期間、下落率によっては、これまでのアセットアロケーションの修正や微調整も必要になるかもしれません。
たとえば僕は、長期で原油価格が低迷する可能性が高まったのを見て、原油関連の比率が高いETFや高コストのリサイクルエネルギー関連は当面手が出せないと考え直しました。
企業の配当が落ち込んでいく可能性があるなら、危険な高配当ETFよりリートの方がいいかもしれない、と考える人もいるかもしれません。
いずれにせよ、損切りせずに含み損を抱えていたら、こうした戦略の立て直しもできず、機会損失につながっていくわけです。
今回の考察、いかがだったでしょうか。
ダウも日経平均もすでに30%も下落している今ごろ書いても後出しじゃんけんみたいなもんですが、僕もいちいち迷いながらの判断なので、自信をもって損切りしなさいと言えないところがつらいところです。
ただ、ここはまだ下落の通過点にすぎないとも考えているので、含み益が減っただけの人はともかく、特に「眠れない玉」をお持ちの含み損の方は一度きちんと考えてみてもいいのではないかと思います。
全部損切るのが精神的につらい方は「不安になったら半分を手仕舞え」という格言もあります。一度半分損切りしてしまうと案外気持ちが楽になって残り半分もすぐ損切りできるかもしれません。
- 長期目線で損切りしない選択はあり
- でも損切りを遅らせると資産形成のスピードも遅れる
- 10年に1度の大暴落時の対応で20~50%の資産格差が生じることも
- 眠れぬほどの玉(含み損)はもつべきではない
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