追記:
「バフェット銘柄一覧」は2021年6月末(2Q)の記事があります。最新の銘柄一覧を知りたい方はこちらをどうぞ。
バークシャー・ハサウェイ(BRK)会長にして世界一の投資家ウォーレン・バフェット氏。
2020年5月に入り、保有していた全航空株の売却を年次総会で明らかにして世界に衝撃を与えました。
そして5月15日、証券取引所に提出された報告書により、さらに大好きな金融株の売却も明らかに。
総会でバフェット氏は「(コロナで)世界は変わる」と述べましたが、この大きなポートフォリオの変更はなにを意味するのでしょうか。
そこで今回は、バークシャーハサウェイの現在の持株全部とセクター別の比率はどうなっているのか、ということを調べてみました。
2020年第1四半期のバフェット銘柄一覧はこれだ!
ではさっそくご覧いただきましょう。
バークシャーハサウェイの2020年3月末現在の全保有株です(5月15日報告分)。
出典はCNBC Warren Buffett Archive 「BERKSHIRE HATHAWAY PORTFOLIO TRACKER」です。バフェット銘柄の動向を追跡するときに便利ですよ!
このサイトに記載のあった銘柄一覧(アルファベット順)を、保有株の評価額の大きい順に並べ替え、さらに各銘柄のセクターを記しました。
正確には3月末現在の保有状況の報告ですが、株価と市場価値(評価額)は5月15日の引け後の最新の値になっています。ちなみに「株主比率」とは、各会社における出資比率のことで、持ち株全体の構成比ではありませんのでご注意を。
表の一番下の4銘柄は、米国の航空4社ですね。バフェット氏はこれを全部売却してしまっています。ということで保有比率はゼロです。
保有株の評価額6兆円減
保有株の評価額は全体で約1,888億ドル(約20兆2,000億円)。
すげー!
と思ってはいけません。バークシャーの保有株の評価額は、2019年12月末には2,480億ドル(約26兆5,300億円)あったのです。
下は最新の「バフェットの手紙」に記載のあった2019年末の保有株上位15銘柄の表を評価額(市場価値)順に直したものです。15銘柄以外の「その他」も合わせた全体の数字が一番下にあります。
2,480億ドルから直近の1,888億ドルを引くと、3か月で592億ドル(約6兆3,000億円)分の資産が消えてしまったことがわかります。
売却したのは3%ほど。上位銘柄にほぼ変化なし
では2019年末で評価額が上位だった15銘柄の株数の異動を見てみましょう。
アップル、バンカメ、コカ・コーラ、アメックス、ウェルスファーゴまでのベスト5までは株式数の変動はなし。クラフトハインツは「手紙」では別扱いとして数字は出していませんでしたが、おそらく売買はしていないはずです。
また、今回売却報道のあった6位のUSバンコープですが、これは買い増した分の売却のようで、残り149百万株は昨年末比で変動はありませんでした。
変化が大きいのはここからです。
- JPモルガン 6,000万株 → 5700万株(▲300万株減)
- デルタ航空 7,000万株 → 0(▲7,000万株)
- ニューヨークメロン銀行 8,800万株 → 8,100万株(▲700万株)
- ゴールドマンサックス 1,200万株 → 200万株(▲1,000万株)
- サウスウエスト航空 4,600万株 → 0(▲4,600万株)
- ユナイテッドコンチネンタル 2,100万株 → 0(▲2,100万株)
それぞれ3月末の終値で売却したと仮定し、売却価格を大きい順に並べてみます。
- デルタ航空 28.52ドル×7,000万株=19.96億ドル
- サウスウエスト航空 35.57ドル×4,600万株=16.36億ドル
- ゴールドマンサックス 154.26ドル×1,000万株=15.43億ドル
- ユナイテッドコンチネンタル 31.55ドル×2,100万株=6.63億ドル
- JPモルガン 89.57ドル×300万株=2.69億ドル
- ニューヨークメロン銀行 33.44ドル×700万株=2.34億ドル
合計約63.4億ドル(約6,780億円)
航空株3社で42.95億ドルですが、ここには15位以下のアメリカン航空は含まれていません。報道では航空株全体で40億ドル分売却とあるので、計算が少し合いませんが、これはおそらく「3月末より前のもっと安い価格で売った」+「2月のデルタ航空買い増し分の含み損」ということかと思います。
あと、変化が大きいのはゴールドマンサックスです。
5月16日付けの日経新聞によれば、バフェット氏がゴールドマンサックス株を保有したのは、2008年の金融危機がきっかけでした。窮地に陥った同社に手を差し伸べ、50億ドル相当の優先株やワラント(新株予約権)を取得したそうです。
昨年末には3.5%の株主でしたが、一気に8割超も売却してしまっています。もう面倒は見たからここから先は知らんってことでしょうか。
コロナ対策によるゼロ金利政策はまだまだ続きそうで、金融機関は軒並み厳しい収益環境に置かれていますから、バフェット氏もお気に入りの金融株にメスを加えなくてはならなくなったということでしょう。
報道では触れられていませんでしたが、しれっとNYメロン銀行も売却していますね。
まあ、数字は十分に大きいものですが、バークシャーのポートフォリオからしたら、実はさほどのことはありません。
航空株の40億ドルは全体1,888億ドルの2%ちょいですし、金融株売却分を含めた60億ドルは全体の3%ほどの数字です。
上位の集中投資している銘柄は全然動かされていないに等しいと言っていいでしょう。
ただし、バフェット氏はSECへの報告義務がある株主比率(出資比率)10%を超えないように調整しているフシがありますので、USバンコープやNYメロン銀の売却はさらなる売却の布石という見方も成り立ちます。
バフェット銘柄のセクター構成比に変化発生!
せっかく持ち株をセクター別に分類したんで、構成比も求めてみることにしました。
以下がセクター別比率の円グラフです。
バックデータはこちら。
昨年末には全体の40%以上あり、長らくバフェット銘柄の首位の座にあった金融セクターが34%に後退し、首位陥落。
代わりにIT(情報技術)セクターが40%超でトップに躍り出ました。
これは、持株数こそ増減していないものの、もともと2位以下を大きく引き離して評価額トップだったアップル1銘柄の数字です。暴落から順調に値を戻したことで、出遅れ+売却で評価額が落ちた金融株と比べて相対的に比率が上がったわけですね。
景気後退局面とアフターコロナ後の米中貿易摩擦でスマホ販売には暗雲がただよっていますが、バフェット氏のアップルへの長期的な信頼感は揺るがないようです。
バークシャーははたして大丈夫なの?
最後にバフェット関係銘柄・セクターの大まかな値動きをチャートで見てみましょう。
赤がバークシャーハサウェイ(BRK)、オレンジがアップル(AAPL)。
そして、黄色はバンガードのVHF(金融セクターETF)、青はJETS(米航空株ETF)です。
ETFはあくまで目安ですが、バークシャーが保有していた航空・金融株はセクターを代表するような大型銘柄ばかりなので、全体はETFとほぼ同じチャートを描いているはずです。
これを見ると、バークシャー株は航空株の暴落と金融株の出遅れにかなり引きずられてしまっている印象を受けますね。反対にアップルはほぼ高値まで戻していて力強い。
ちなみに、直近で発表されたバークシャーの今期(2020年12月期)の業績見通しは、純利益が333億ドルと前期実績比で59.1%減。実に481億ドル(約5兆1,500億円)もの減益を見込んでいます。
しかし、「2020年版バフェットの手紙」の紹介記事でも触れた通り、これはあくまで米会計基準上、保有株の未実現損益の増減を含めているためです。2019年実績が前期比で20倍も伸びているのだから、確かに今期の落ち込みは大きくなるのでしょう。
でも、これを額面通りに取る必要はまったくないです。
バークシャーの今期の売上高は2,767億ドル(前期実績比8.6%増)を見込んでいて、こんな状況でも本業は順調なことがわかります。
また、バフェット氏には次なる一手が残されています。
それはたまりにたまったキャッシュの使い道です。
前期のフリーキャッシュフローは過去最高の331億ドル(3兆5,400億円)。2018年末から実に7倍強に増えています。これは、株価が過去最高を更新していた2019年はバフェット氏にとって魅力的な投資対象が見つからない年だったためです。
このキャッシュに今年売った航空株と金融株の売却益が上乗せされ、おそらく4兆円強がすぐにも新たに投資できる態勢にあるわけです。
バフェット氏のことですから、きっと虎視眈々とバーゲンセールとなっているお宝株を探しているはずです。
これだけのキャッシュをどの銘柄、どのセクターに投じてくるのか。底をついたと見るや、航空株を全面的に買戻しすることだってあるかもしれません。
アフターコロナを見据えたバフェット氏の投資判断にはまだまだ注目ですね。
- 航空株全株売買に続き、大好きな金融株を売却
- 実は売却した金融株は資産全体の1%程度
- ただし今後金融株を大量に売却する可能性は捨てきれない
- 評価額上位のバフェット銘柄にほぼ変化はなし
- アップル1銘柄でITセクターが40%超でトップに
- 会計上の利益は激減するも、バークシャハサウェイの経営は順調
- 4兆円超のキャッシュフローの投資先に注目!
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