今回から、新しいシリーズとして、おすすめ投資本の紹介をしていきます。
すでに「おすすめ投資本名著21選」の記事をお読みになった方は、その1冊ずつのくわしい解説だと思ってください。
第1回目として取り上げるのは、ロバート・キヨサキ+シャロン・レクター著『金持ち父さん 貧乏父さん』(白根美保子訳、筑摩書房刊)です。
投資関連本では群を抜く世界的ベストセラーですね。僕もこの本を読んで目からうろこが落ち、投資に対してすごく真剣になれた気がします。
本シリーズでは、記事を読むだけで本のエッセンスと重要な個所が理解できるよう、投資家目線でわかりやすく書いていくつもりですが、すべてを説明しきれませんので、興味が出た方は実際に購入して通読されることをおすすめします。
目次
全世界で3,000万部超売れたメガヒット
さて『金持ち父さん貧乏父さん』です。
読んだことはなくても、そのユニークなタイトル名を聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。
まずは中身の概要紹介をどうぞ。
世界100か国以上で翻訳され、3000万部以上を売り上げた超ベストセラーにしてロングセラー。著者には2人の“父さん”がいます。1人は高学歴で勤勉だけどいつもお金に困っている実の父。もう1人は中卒だけど事業と投資で成功してお金持ちの親友の父。それぞれの「父さん」はいったい何がどう違うのか。本書は私(=著者)がこの金持ち父さんから学んだお金についての哲学を開陳していきます。読み進めていくと、金持ち父さんと貧乏父さんのお金に対する考え方や懐に入るお金の流れの違いがはっきりと見えてきます。そして、競争ばかり激しくて単なるどんぐりのせいくらべにすぎない「ラットレース」から抜け出し、「経済的自由」を手に入れるには、ファイナンシャル・インテリジェンスを身につけ、稼ぐために働くのではなく「お金に働いてもらう」ことが大切だということがわかってきます。対話やエピソードが豊富で、厚いわりに読みやすいのも評価ポイント。「投資がなぜ必要なのかわからん!」「どうしたらお金をためられるのか知りたい!」という人にまず読んでほしい1冊です。
著者はハワイ出身の日系4世
著者のロバート・キヨサキは1947年生まれ、米国ハワイの出身です。日系4世で、清崎徹(きよさき・とおる)という日本名も持っています。
ロバートは教育家として知られる一家に生まれました。父はハワイ州の教育長まで務めた人物のようです。
ハイスクール卒業後、彼はニューヨークに出て商船大学に学び、卒業後は米国海兵隊に入隊。ヘリのパイロットとしてベトナムに出征しました。
帰還後はゼロックスに入社し、その間の1977年に自分の会社を立ち上げ、サーファー用財布で世界的なヒットを飛ばして財をなします。さらに85年には教育企業を設立し、世界中の人にビジネスと投資を教えました。
その後、47歳で引退。それから経営コンサルタントのシャロン・レクターと共著で書いたのが『金持ち父さん貧乏父さん』。これが世界的な大ヒットとなりました。100ヵ国以上に翻訳され、日本でも300万部超という驚異的なベストセラーとなっています。
不動産は一時全米に1,000件以上も保有していたようです。すごいですね。
「同じ時期に同じ手法で日本で不動産投資してたらとっくに破産していた」と批判する向きもありますが、これはそれぞれのお国柄や時代もあるのでまあどうでもいいことです。
このビジネスと投資で大成功を収めた男が、お金持ちになるための普遍的な考え、お金の教養をわかりやすく語っているからこそ、時代や国境を超えて支持されているのです。そこは謙虚に学ばないといけません。
貧乏父さんは世間一般の父親像そのもの
では本書の中身を要点だけ見ていくことにしましょう。
まず、「貧乏父さん」として語られているのは、著者の実のお父さんのこと。教師である実のお父さんは、決してダメ人間ではありません。むしろ、大学を奨学金で3つもはしごし、博士号を取り、ハワイの教育長まで務めた知的レベルの高い、まじめで誠実な人間だったようです。
このお父さん、「金への執着は悪への尊厳だ」「大切なのはお金じゃない」という考えの持ち主で、子供には「一生懸命勉強すればいい会社に入れる」「いい仕事に就いて高い給料を得なさい」と言うような人だったようです。
こんなセリフ、どこかで聞いたことはないですか?
そう、貧乏父さんとは世間の大半の父親像でもあるのです。
僕を含め、多くの人がこうしたステレオタイプな言葉を親に言い聞かされて育ってますよね。それがいつしか当たりまえのことと思えてきて、あたかも自分で導き出した人生訓のように自分の子供に話していたりしているのではないでしょうか。
「勉強していい会社に入れよ、息子よ!」「うん父ちゃん」
これに対して、親友の父である「金持ち父さん」はまったく異なる考え方をします。
「金のないことこそ諸悪の根源だ」
「頭のいい人間になるのではなく、頭のいい人間を雇う人間になれ」
そして、お金についての教育を自分の子供がまだ小さいうちから家庭の中でします。自分の投資経験やビジネスなど、語れるものがあるからですね。
一方の貧乏父さんは、自分が受けてこなかったお金の教育を子供にできるわけがないので、「大いに勉強していい仕事に就いて稼げ」としか言えないわけです。
著者は幼いころからこの貧乏父さんと金持ち父さんの両方から様々な話を聞かされます。
そしてふたりの根本的な違いがなんなのかに気づきます。一言で言うならそれは、
「お金を稼ぐために働く者」と「お金に働いてもらう者」の違い
ですね。この発想の違いはそのまま親から子へと受け継がれ、世代を経て残酷なほどの格差を生み出し続けるわけです。
マイホームは資産じゃない
お金持ちの発想の根底にあるのが、「資産」と「負債」の厳密な仕分けです。
お金持ちは、お金を生み出す「資産」とそうでない「負債」を明確に区別します。そして常に自身の「貸借対照表」を念頭に置き、より多くの余剰金(キャッシュフロー)を生むシステムをつくり、増やしていこうとします。
金持ちは資産を手に入れる。中流以下の人たちは負債を手に入れ、資産と思い込む
と本書には書かれています。
資産と負債の違いとは何か。
資産は私のポケットにお金を入れてくれる
負債は私のポケットからお金をとっていく
とあります。
持ち家はどっちに入るでしょうか。
それが投資物件で家賃収入が定期的に入ってくるものではない限り、お金持ちは、持ち家は投資でもなく資産でもなく、「負債」だと考えます。
え!そうなの?
この意見には反論も多いかもしれません。多くの人にとってマイホームは「夢」であり、「人生最大の投資」と考えている人も多いでしょう。
でも金持ち父さんは、以下の理由から、マイホームを資産とは考えないのです。
- 完全に自分のものにならない家のために一生ローンを払い続ける
- 経費や維持費は税金支払い後の収入から支払い続ける
- 固定資産税もばかにならない
- 家の価値は上がるとは限らない(日本では下落するのが当たりまえ)
- 持ち家にお金をつぎ込むことで投資チャンスが失われる
特に一番最後の「投資チャンスの喪失」を著者はくわしく説明しています。マイホームに投じるお金、何年も払い続けるローンは、同額を投じて「もっと増やす」という機会を奪うことになります。
じゃあ車は?高級時計は?絵画や宝飾品は?
そうしたものが次々とお金を生む、あるいは市場価値のあるものなら資産となるでしょうが、買ったときからどんどん減価していくものであれば、やはり本当の資産とは呼べません。
ぜいたくは一番あとに回す
じゃあ本当の資産とは何なんでしょう。
著者は続いて、「あなたやあなたの子供たちに買うように勧める」「本当の資産」を8つに分けて挙げています。
- 自分がその場にいなくても収入を生み出すビジネス
- 株
- 債券
- 投資信託
- 収入を生む不動産
- 手形、借用証書
- 音楽、書籍などの著作権、特許権
- その他、価値のあるもの、収入を生み出すもの、市場価値のある物品など
著者は仕事を続けながら、自分のビジネスを立ち上げ、ここに分類される「資産」を増やしていったと述懐します。
これらの収入による「キャッシュフロー」が増えていってから、ぜいたく品なりなんなりを買えばいいと著者は言います。
金持ちと中流以下の人間の大きな違いは、中流以下の人間がお金を手にするとまずぜいたく品を買おうとするのに対して、金持ちはぜいたく品を最後に回すことだ。
我々は一生懸命「ラットレース」をしている
義務教育でお金に関する教育をまったく受けられない我々日本人は、一生懸命勉強していい会社に入り、勤勉に働いて出世し、その間こつこつと貯蓄して、今より豊かになりたいと願いながら、年をとっていきます。
努力した分、多少は豊かになれるかもしれませんが、著者に言わせればそれは「ラットレース」にすぎないわけです。
「ラットレース=ネズミの競争」とは、働いても働いても一向に資産が貯まらない様子を、回し車の中でクルクル回るネズミ(ラット)にたとえた言葉です。本書によって有名になった著者独自の表現ですね。
これを読むと、なんだかキツネにつままれたような気持になってきます。僕らが「自分の幸福のため」と思って親や学校から受けてきた教えはなんだったのかと。
よく考えたらそうした教えって、社会や組織、国家権力が僕らを都合よく支配して搾取するために作り出した巧妙なウソなのかもしれません。それも、何代にもわたって少しずつ築きあげられた、、、。
僕らは生まれながらにこの回し車に乗せられ、受験競争やら就職活動、会社での出世競争など、さまざまな「ラットレース」で疲弊していくわけです。
ここから抜け出すには「お金がお金を生み出す仕組み」を理解し、その仕組みをビジネスオーナーや投資家となってたくさん持ち、経済的自由をつかみとる必要がある、というのが本書の教えの根幹です。
逆にそれができないなら、ずっと死ぬまでラットレースを続けるしかない。
これって受け止めようによってはけっこう残酷な話でもありますね。
金持ち父さんの教えは6つ
本書ではこうしたお金にまつわる哲学を6つの項目にまとめています。
- 金持ちはお金のためには働かない
- お金の流れの読み方を学ぶ
- 自分のビジネスを持つ
- 会社を作って節税する
- 金持ちはお金を作り出す
- お金のためではなく学ぶために働く
「ビジネスを持つ」「会社を作って節税する」あたりは本書の後半で語られています。
長くなるのでここでは詳細は省きますが、パッケージ化された投資と自分から仕組みを作る投資、小型株と不動産をベースとした資産づくりなど、興味深い話がいろいろ出てきますので、興味のある方は本書を読んでみてください。
また、「ファイナンシャル・インテリジェンス」を高めることも後半で語られる重要なテーマですね。これに必要な知識は4つ。
- 会計力・・・お金に関する読み書き能力(ファイナンシャルリテラシー)
- 投資力・・・投資(お金がお金を作り出す科学)を理解し、戦略を立てる力
- 市場の理解力・・・需要と供給の関係を理解し、チャンスをつかむ力
- 法律力・・・会計や会社に関する法律に精通していること
モノを売って富を得るのに必要なのは、この4つの専門的な知識を組み合わせた「基本的な土台」なのだといいます。
ほかでは、「具体的な行動を始めるためのヒント」という章もよかったです。ここも長くなるので項目だけ挙げておきましょう。
- いまやっていることをやめる
- 新しいアイディアをさがす
- 自分がやりたいと思っていることをすでにやりとげた人を見つける
- 講座に出席する、自習用のテープを買う
- オファー(買付申込)をたくさんする
- ジョギング、ウォーキング、ドライブをする
- 将来の価値を見極める
- 株式を「バーゲン」で買う
- 適切な場所でさがす
- 買い手を見つけてから売り手をさがす
- 歴史から学ぶ
項目だけ見てもなんのこっちゃと思うかもしれませんが、これらが実践的な行動のヒントになるんですね。
で、読んだらすぐ、実践できるものに取り掛かることをおすすめします。
僕の場合は、「株をバーゲンで買う」をもっと知りたくて、バリュー投資やグロース投資のいろんな本を買い漁って読み、さらに投資の勉強を深めるためにいろんなセミナーに参加したり投資の学校に入学したりしました。
現状に不安を抱え、会社や社会に不満をぶつけたって状況は変わりません。うじうじ考えているより、とっとと自分でできることを知り、そこに身を投じるべきです。そうすることで見えてくることがいっぱいあります。
読むべき投資の本、参加すべきセミナーやお金の学校は以下の記事を参照のこと。
金持ち父さんシリーズはこれを読め!
「金持ち父さん貧乏父さん」の世界的ヒットに気をよくしたのか、「金持ち父さん」シリーズはその後続々と刊行されています(下の写真は金持ち父さん公式サイトより)。
それに飽き足らず、最近は会員を集めての投資スクールとか、ボードゲームまで、実にさまざまなことを手広くやってますね。「金持ち父さんビジネス」は金になるみたいです。
まあしかし、全部に手を出す必要はないでしょう。
読むべきは最初の『金持ち父さん貧乏父さん』、そして実践編である『金持ち父さんの投資ガイド(入門編)』の2冊。
で、とっとと投資の実践を始めて、その後で『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』『金持ち父さんの投資ガイド(上級編)』あたりを読んでみる。
まあ、ぜいぜいこの4冊で十分と思います。
ちなみに「キャッシュフロー・クワドラント」とは、仕事の立場を「従業員(E)」「事業主(S)」「ビジネスオーナー(B)」「投資家(I)」という4つのカテゴリー(クワドラント)に分け、4者間のお金の流れやそれぞれの働き方・稼ぎ方の違い、(E)から(B・I)にどう変化していけばいいのか、などを考えるために作られた著者独自の概念です。
ちょっと抽象的すぎるて退屈する人もいそうですが、それぞれのクワドラントの発想の違いなどがわかり、より有利な稼ぎ方、経済的自由への近道が見えてきます。
さて、「3分でわかる『金持ち父さん 貧乏父さん』」いかがでしたでしょうか。
投資経験者が見たら、もう手あかがつきまくっていて新鮮さが感じられないかもしれませんが、これから投資を始めたいという人にはぜひとも最初に手に取ってほしい本であることは間違いありません。
「お金のために働く」のではなく「お金に働いてもらう」
このコペルニクス的な発想の転換をぜひ、本書を通して味わってほしいと思います。これを読むと、漫然と投資しようとしていた考えに、一本きりっとした芯が通るのではないでしょうか。
そうなることで、「投資」に対する真剣度も増すはずです。