バークシャーハサウェイが四半期ごとに金融当局に届け出ている保有株、通称「バフェット銘柄」。2020年第1四半期から追いかけて、今回が5回目。年が改まって2021年の第1四半期の一覧をまとめました。
表やグラフ作りがなかなかしんどいですが、バフェットさんの頭の中を知りたいと一念発起し、勉強のために続けています。ちゃんとした日本語のまとめサイトが見当たらないこともあり、、、。
今回は激動の2020年ほどの動きはないですが、それでも新規で保険会社に投資を始めたとか、昨年まで上位銘柄だったあの銀行株を大量に売却したなどの話題をまとめました。
まあ細かいことは抜きにして、最新のバフェット銘柄一覧やセクター比率、上位10銘柄比率を手っ取り早く知りたいという方にお役立ていただければと思います。
2020年1Q以降のバフェット銘柄一覧の記事一覧はこちら↓↓↓
2021年版「バフェットからの手紙」の全文翻訳と解説はこちら↓↓↓
目次
これが2021年3月末のバフェット銘柄一覧だ!
まずはいつものように一覧の表からご覧いただきましょう。
CNBCのBERKSHIRE HATHAWAY PORTFOLIO TRACKERの資料を元に、2021年3月末現在の保有株を6月末の市場価値(評価額)の大きい順にまとめたものです。
色をつけているのは、
- オレンジ→株数大幅増または新規購入
- 薄オレンジ→株数増加
- 薄青→株数減
- 濃い青→株数大幅減または全売却
という目安です。
一覧表につけたこの色数を見る限り、大きな売買は少なめで、順位の変動も株価の上下動によるものが多い印象です。
航空株全売りや金融株大幅売却、日本の商社株大量買いなどかなり激しく動かした2020年と比べ、2021年はおとなしめに見守っている感じでしょうか。
上位10銘柄の比率を円グラフにするとこうなります。
比較用に2020年末の上位10銘柄のグラフもどうぞ。
セクター別比率では金融がわずかに増加
これをセクター別にまとめた円グラフがこちら。
こちらも比較のため2020年12月末のグラフを掲載しておきます。
ほとんど変わっていないように見えますが、昨年セクター別1位になった情報技術は少し比率が落ちました。
ただし、ほぼ唯一の情報技術セクター株であるアップル(APPL)は、2020年末には一部売却して値上がり益を利確しましたが、今四半期はまったく売却していませんでした。
2021年に入ってハイテク株のパフォーマンスも鈍化しているため、ほかのセクターの方が増えたり上昇したりしているということなのでしょう。
ハイテク株は春に株価調整してからまた上昇を始めているので、次期にはまたアップル比率を高めてくるのではないかと予想しています。
一方、2020年にずっと減らし続けていた金融セクターですが、ここにきて再び比率が少し大きくなっています。このあたりは別項で解説します。
エネルギー・製薬は早くも売り目線?
2020年に新規購入したベライゾン(VZ)は今期わずかに増やしてベスト10を維持しているものの、同じく新規購入した石油大手のシェブロン(CVX)や製薬大手のメルク(MRK)は今期は一部売却して減らしています。
エネルギー関連で言えば、前四半期にもポジを落としていたカナダの総合エネルギー企業サンコアエナジー(SU)を今期は残り全部(1380万株、評価額約3.3億ドル)売却していますね。
原油価格はコロナ禍からの経済回復にともなって年初来高値を更新していってますから、エネルギー株を減らしたのは時期尚早だったのではないかと素人目には映るんですが、、、。
思えば2020年も、金鉱株のバリックゴールド(GOLD)やワクチン関連のファイザー(PFE)などを買って、次の四半期には速攻で売却していました。
バフェットさんといえば、企業価値を元に割安株を買って長期保有し、莫大な資産を築いてきたバリュー投資の神ですが、経営を後進に託してからはこのように短期目線で利益をとるトレードも目立ちます。
まあ単に目論見がはずれただけということもありそうですが、、、。
中国EV、伊藤忠が一覧表に登場
CNBCの一覧はずっと米国の証券市場上場の株しか一覧になっていませんでしたが、今回の表からOTC(店頭取引)の保有株も入っていました。
証券取引所を通さずに金融機関を通して行う相対取引(Over the Counter)のこと。アメリカには独自のOTC市場があり、銀行や信託銀行が現物株を裏付けに発行するADR(米国預託証券/American Depositary Receipt)などを通してドル建てで世界中の株式を取引することができる。OTC株は情報開示の透明性などに応じてランクが設けられている。
それが9位に入った中国EV(電気自動車)メーカーの比亜迪汽車を子会社に持つの比亜迪股份有限公司(BYDDF)と17位の伊藤忠商事(ITOCF)です。
すでに今年2月の「バフェットからの手紙」で明らかにしていたように、トップ15銘柄の中にこの2銘柄がランクインしていましたが、それを反映したものと思われます。
前回記事の当該関連はこちら↓↓↓
伊藤忠は2020年夏に購入が明らかになった5大商社の一角です。
持株比率5%ほど購入ということで最初の記事では7,900万株と見積もっていましたが、今回の一覧表で5.1%の約8,100万株、時価にして約24億ドル(約2,600億円)分を保有していることがわかりました。
ちょっと解せないのは、同じく5%ずつ購入したとされる他の商社の株です。
三菱商事や三井物産なんかは、仮に5%保有していたら20億ドル前後あるし、それより時価総額の低い住友商事や丸紅にしても、5〜10億ドルはあるはず。
当然一覧表に顔を出してもいいはずなんですが、名前が出ていません。
参考までに、下は5大商社株を5%ずつ購入したという仮定の上でつくったグラフです。
ちなみにこのグラフではわかりやすくするため「総合商社」として独立させていますが、米国では生活必需品(Consumer Staples)に分類されてますので(BloombergITOCF参照)、先に掲載したセクター別の円グラフでは生活必需品に数えています。
米国のセクター分類について知りたい方はこの記事をお読みください↓↓↓
MMCにAON、保険関連株の購入進む
2020年末に新たにマーシュ・アンド・マクレナン(MMC)という大手保険ブローカーへの投資が明らかになりましたが、今期もこのMMCを約100万株増やしています。
そして新たに別の保険関連企業への投資が明らかになりました。
それがエーオン・コーポレーション(AON)です。
概要:エーオンは世界120カ国以上500ヶ所の営業拠点を持つグローバル企業。主な事業内容は、企業に対するリスクマネジメントのコンサルティングやソリューション(解決策)の提供、子会社を通して保険商品の仲介、損害保険の代理業など。英国発祥で、米国子会社の本社はシカゴ。
- 英文社名:Aon Plc
- 本社所在地:122 Leadenhall Street London, England 60601 GBR
- 設立:1979年
- 代表者名:Mr. Gregory C. Case
- 業種分類:金融 (Financials)
- 市場名:NYSE(ニューヨーク証券取引所)
- 事業所:世界120カ国500ヶ所以上
- 従業員数:約50,000人
- ウェブサイト:www.aon.com
前期バフェット銘柄記事でMMCを紹介したときにも書きましたが、バークシャーハサウェイの本業の1つは保険業です。つまりAONはバークシャーの競合相手のような気がするんですが、投資したということは似て非なる事業なんでしょうか。そのへんの事情はよくわかりません。
ひょっとすると、コロナウイルス感染拡大を契機に、パンデミックによるリスクに備える損害保険契約やリスクマネジメントなどの事業が急拡大すると見ているのかもしれません。
AONの購入株数は409万株、評価額は9.98億ドル(約1088億円)で保有株全体の中では27位。7.38億ドルのMMCの少し上というところにつけました。
ちなみにAON(赤)のコロナ前からの株価推移はこんな感じです。バークシャー(BRK.b、青)、MMC(黄)と比較してみました。
3銘柄ともだいたい似たような値動きで、2021年に入ってコロナ前の価格をそれぞれ上抜いていますね。
銀行・金融関連は引き続き売り
一方、昨年大幅にポジションを落とした銀行・金融関連ですが、1Qでも引き続き売りを続けています。
今期はシンクロニー・ファイナンシャル(SYC)を全部(2000万株強)、ウェルスファーゴ(WFC)の大半(5,000万株弱)を売却しました。
ウェルズファーゴ(WFC)は2020年5月には約3.4億株保有し、全銘柄中6位だったものの、年末に5,000万株まで減らし、ついに今期は60万株まで一気に売り飛ばしています。おそらく次の期には残りもすべて売却しているんではないでしょうか。
セクター別比率の話に戻すと、WFCのような銀行・ファイナンス系の売却は今期も進めているものの、保険関連も同じ「金融セクター」のため、差し引きするとわずかに金融比率が上昇した格好です。
速報!バフェットさん、ブラジルのデジタル銀行に5億ドル投資!
これは2021年6月8日に発表されたので、おそらく2Q(もしくは3Q)の投資事業ということになりますが、バークシャーハサウェイがブラジルのデジタル決済銀行であるNubank(ヌーバンク?ヌー銀行?)に5億ドル投資したことが明らかになりました。顧客が4000万人もいるでかい銀行ですが、未上場のためバフェット銘柄一覧には出てこない可能性もあります。とはいえ、銀行系は減らす方針と思っていたら、意外な投資先ですね。(2021年6月8日)
CNBCニュースサイトはこちら
4ヶ月余で時価300億ドル上昇
全体の売買はそれほど多くはないものの、保有株の時価総額は大きく動いています。
一覧に掲載された48銘柄の合計評価額は3,074億ドル(2021年6月28日現在)。
前回2020年末の保有株を記事にまとめた2月半ばの時価総額が約2,785億ドルでしたから、わずか4ヶ月余りで約300億ドル、日本円で3.3兆円も増えた計算です。
ちなみに、この利益の規模がどれくらいかというと、日本のソフトバンクグループの1年間の利益(2021年3月期連結最終利益)が約5兆円でした。「トヨタを抜いて東証史上最高!」みたいなニュースになりましたよね。
一概には比較できませんが、バークシャーの保有株の上昇額3.3兆円は、株式市場のパフォーマンスが鈍化した2021年に入ってからの、しかもたった4ヶ月の上昇ですから、いかにでかいかということがおわかりいただけると思います。
最後に、バークシャー(BRK)の2021年年初来の株価をS&P500(SPX、青)と比較したチャートを載せておきます。
2020年は3年続けてS&P500に劣後してしまったBRKですが、2021年は半年過ぎて今のところアウトパフォームして(上回って)います。
このまま逃げ切りなるか!
- セクター別比率で金融がわずかに増加
- エネルギー・製薬は早くも売り目線?
- 中国の電気自動車、日本の商社が一覧表に登場
- 金融セクターは保険株が増えている
- MMCに続きAONへの投資を開始
- 銀行・金融株はまだ減らしている
- ウェルスファーゴ風前の灯火
- 4ヶ月余で評価額は300億ドル上昇
- 2021年はバークシャーがS&P500を上回って推移
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