バークシャーハサウェイが四半期ごとに金融当局に届け出ている保有株、通称「バフェット銘柄」。2020年第1四半期から追いかけて、今回が6回目。2021年の第2四半期(2Q)の一覧をまとめました。
前期同様、売買の動きは2020年ほど大きくはありませんが、ヘルスケア分野で新たに購入したり売ったり、食品スーパー銘柄を買い増したりなど、目につく動きをわかりやすくまとめました。
最新のバフェット銘柄一覧やセクター比率、上位10銘柄比率を手っ取り早く知りたいという方にもお役立ていただければと思います。
前四半期(1〜3月、1Q)のバフェット銘柄一覧は以下の記事をどうぞ↓↓↓
目次
これが2021年6月末のバフェット銘柄一覧だ!
いつものように一覧の表からご覧いただきましょう。
バークシャーハサウェイが米証券取引委員会に四半期ごとに提出する「Form13F」(100億ドル以上の資産を持つ投資機関の持株報告)を基にCNBCが独自にまとめたBERKSHIRE HATHAWAY PORTFOLIO TRACKERの一覧表を、市場価値(評価額)の大きい順に並べ替えたものです。
株価、市場価値は2021年9月5日現在のものです。
色をつけているのは、
- オレンジ→株数大幅増または新規購入/順位大幅上昇
- 薄オレンジ→株数増加/順位小幅上昇
- 薄青→株数減/順位小幅下落
- 濃い青→株数大幅減または全売却/順位大幅下落
という目安です。
中国EV(BYD)と日本の商社(伊藤忠)が入っていますが、これらは13Fに報告されたものではなく、「バフェットからの手紙(株主向けの報告書)」に記してあった内容をCNBCが独自に掲載したものです。
順位は株価の変動で前後しますので、異動については株式数の増減に注目してみてください。
評価額は4ヶ月で154億ドルプラス!
届出のあった保有株の時価総額は合計で3,228億ドル。前期の3,074億ドルに比べてちょうど5%の増加です。
5%といっても154億ドル(約1兆7,000億円)ですからね。あらためてすごいなあと思います。
ちなみに2020年末比だと15.9%増(+443億ドル)、前年同期比は28%増(+708億ドル)です。長期保有&複利効果の威力をまざまざと感じますね。
ただ、航空株全売りや金融株大幅売却、日本の商社株大量買いなど激しく売買した2020年と比べ、2021年はこれまでのところバフェットさんの売買はおとなしめです。
トップ10銘柄の変動なし
上位10銘柄の比率を円グラフにするとこうなります。
8位のUSB(USバンコープ)を少し売却したほかはトップ10の保有株数は変わらず。トップ10の評価額順位も2021年3月末(1Q)と変わりません。
相変わらずアップル(AAPL)の成長力が突出している感じです。
ほとんど変わりませんが、比較用に1Qの上位10銘柄のグラフもどうぞ。
セクター別比率は再び金融が減少
バフェット銘柄をセクター別にまとめた円グラフがこちら。
こちらもさほどの変動はありません。アップルの上昇で情報技術セクターの比率が40%を超え、金融の比率が30%を少し切った程度です。
前四半期の記事で「ハイテク株は春に株価調整してからまた上昇を始めているので、次期にはまたアップル比率を高めてくるのではないか」と書きましたが、予想通りになりました。
こちらも比較のため2021年3月末のグラフを掲載しておきます。
「女性の健康」向け製薬会社を新規購入!
この2Qに新たに購入したのはオルガノン(OGN)というヘルスケア企業です。
同社の概要は以下の通り(Yahoo!ファイナンスのページより)
オルガノンは製薬大手メルク(MRK)傘下だった女性向け健康薬専門の企業で、2021年6月にメルクが出資・株式放出して独立上場したようです。
バフェット銘柄のメルクの株式数が減っているのはこのオルガノンの独立と関係あるのおかもしれません。
オルガノンは上場したてとはすでに売り上げが年80億ドルあります。
出産・避妊関連薬や「バイオシミラー(特許切れのバイオ薬の後発品)」に強みがあり、今後も二桁成長が見込めるとのこと(YAHOOファイナンス掲載のMoneyWizeニュース参照)。
上場後の株価の推移はこんな感じです。上場直後の初値をやっと抜いてきた感じで、現在カップウイズハンドル形成中といったところ。
配当利回りも3%を超えており(直近2021年8月の四半期配当は0.28ドル)、今の価格ならお買い得という判断なのかもしれません。
「女性の健康向上」は世界的なテーマでもあるので、今後長期的な追い風が吹く可能性もありそうですね。
ヘルスケア・保険関連に変動あり
今期の売買で目立つのはヘルスケアと保険関連です。
メルクを大量に売却した理由は上記に触れた通りですが、それ以外のヘルスケア関連で言えば、バイオジェン(BIIB)を全株、アッヴィ(ABBV)とブリストルマイヤーズ(BMY)の一部を売却しました。
このあたりの真意はよく分かりませんが、上記のオルガノンを新規購入した分、他の製薬を減らしてヘルスケアの比率を一定に保とうとしているような印象を受けます。
また、前四半期に新規購入したエーオンコーポレーション(AON)を今四半期も増やした一方、2020年末に新規購入し、前四半期も100万株ほど増やしたマーシュアンドマクレナン(MMC)は逆に100万株超減らしました。
こちらも全体の比率を一定に保つためにリバランスしているように見えます。
食品スーパー銘柄を大量買い増し
今回もうひとつ注目されるのが、食品スーパー大手のクローガー(KR)の株式数を増やしてきたことです。前四半期より100万株以上購入し、保有数を6100万株超としました。
クローガーのこの1年のチャートと今回100万株超を購入したと思われる期間です。その後上昇を続けていますので、結果的にいいところで購入していますね。
米国の小売株は売上順に1位ウォルマート(WMT)、2位クローガー(KR)、3位コストコ(COST)が有名ですが、このうちなぜクローガーに投資をしたんでしょうか。
3社の5年チャートを比較すると、COST(青)、WMT(黄)に比べてKR(赤)の出遅れ感が目立ちます。
ただ、売上はきわめて順調で、EC部門の伸びも期待されていますから、この出遅れは逆にお買い得感にもつながっていそうです。
PER(株価収益率)もWMTが24倍、COST43倍に対し、KRは13倍と割安になっており(2021年9月5日現在)、それを裏付けています。
金融相場から業績相場に移行していく際、売上・利益のしっかりしたこうしたバリュー銘柄は浮上しやすいので、こちらもお買い得なのかもしれません。
欧州の通信事業に見切り?
バフェット銘柄としてはあまり話題にならない通信サービスの事業会社に、ともにNASDAQ上場の「リバティメディア」「リバティグローバル」「リバティラテンアメリカ」があります。
いずれも米国のケーブル王と称される、ジョン・C・マローン氏が起業または出資して築いた事業会社ですね(正直いって資本関係は複雑すぎてよくわかりません)。
リバティメディア(以下リバティ)とリバティラテンアメリカ(以下ラテン)は米コロラド州に本社を置き、北米と南米で事業を行っています。
一方リバティグローバル(以下グローバル)は、リバティの海外部門をスピンオフした会社を母体として英ロンドンに本拠を構え、主に欧州でブロードバンドネットを利用した通信事業やケーブルテレビ事業を行っています。
バフェットさん率いるバークシャーハサウェイはこの3つの通信事業会社のうち、グローバルの株式数をかなり売却しています。
以下の表をご覧ください。これは前年同期(2020年2Q:4〜6月期)からの通信サービス関連銘柄の保有株数と市場評価額の推移です。
上のリバティシリウスXM(LSXM)が米リバティメディアグループ、真ん中がリバティグローバル(LBTY)、下がリバティラテンアメリカ(LILA)です。
それぞれ株式にクラスAとクラスCがありますが、これは議決権の有無の違いであり、会社としては同じです(バークシャーにもAとBがありますね)。
この表から明らかな通り、米国を本拠に置くリバティとラテンは株数は減らしていませんが、真ん中のグローバルはかなりの株を売却。評価額も626百万ドルから54百万ドルに、10分の1以下に減らしています。
つまり、同じ通信事業でも、欧州の通信事業に見切りをつけたということなのかもしれません。
グローバルとラテンの業績をざっと見たところ、ラテンの方はまだ赤字であるものの、売り上げは増加傾向にあり、今期(2021年12月期)には黒字化達成見込みのようです(表はSBI証券の当該ページより)。
しかしグローバルの方は売り上げはほとんど横ばいで、2020年には最終赤字に転落しています。
ちなみにリバティメディア株の名前の中にある「シリウスXM」とは、シリウスとXMという2つの通信衛星の名前です。リバティメディアはこの衛星を利用したネットサービスをしているほか、シリウスXMラジオ(SIRI)という衛星ラジオ放送の事業会社にも出資しています。
バークシャーもこの会社に投資しています(一覧の35位)。こちらはときどきバフェット銘柄として話題になるので、有望株なのかもしれません。
下記はこのSIRIも含めたバフェット銘柄通信サービス4社の過去5年の騰落率チャートです。
リバティメディア(赤)やシリウスXM(黄)に比べてリバティグローバル(緑)とリバティラテンアメリカ(ピンク)の株価が長期低迷しているのがうかがえます。
ラテンは今後の黒字化とともに株価は上がっていきそうですが、グローバルは売上が伸びず、株価もこの水準から浮上できない可能性があります(あくまで想像ですけど)。
正直言ってこのリバティ関連は報道も少なく、出資関係も複雑すぎてよく理解できませんので、これだけでは軽々に判断できませんが、一応リバティグローバル株を売却しているという事実だでもけ押さえておいてください。
伊藤忠が16位に1ランクアップ
アジアの企業では、前回9位に入った中国EV(電気自動車)メーカーを擁するBYD(比亜迪股份有限公司)は9位で変わらず。
一方、17位だった伊藤忠商事(ITOCF)は16位にワンランクアップしました。
株数は変わっていないので、たまたま上位にいた銘柄が下げて差し引き順位が1つ上がっただけですけどね。
バフェットさんが購入した2020年4〜6月期からの伊藤忠(赤)の株価騰落率チャートは以下の通り。ここのところ息切れ気味で、S&P500(青)についていけなくなっていますが、TOPIX(黄)にはアウトパフォームしていますね。
同じ時期に持株比率5%ずつ購入したはずのほかの商社4銘柄は相変わらず報告には現れません。
銀行株の売りはひとまず収まった?
一番最初に金融セクターの比率が少し減少したと書きましたが、昨年から大幅にポジションを落としてきた銀行株はこの2Qではそれほど売られませんでした。
金融セクターで大きく売られたのは先述した保険のMMCくらいで、銀行株は8位のUSバンコープ(USB)をわずかに売却したくらいです(わずかと言っても100万株だけど)。
2Qではもうなくなっているだろうと予想したウェルスファーゴ(WFC)は売っておらず、わずかに“バフェット銘柄”の名残をとどめていますね。
航空や銀行株の売却を明らかにした2020年5月の総会の際、バフェットさんは、
と言っていました。コロナ禍の先行きを懸念し、倒産や金融破綻などを懸念してのことだと思いますが、これを聞いたとき、まさかこんなに感染拡大が長引くとは正直思いませんでした。
ワクチンが開発され、接種も世界中で進んでいますから、ふつうに考えればこれから収束に向かうんだろうとは思いますが、次々と変異株が見つかっており、予断を許しません。
ただ今後、金融緩和の政策が縮小し(=テーパリング)、中央銀行が金利を上げていけば当然銀行事業には追い風となります。
その前にバフェットさんがこれまで売っぱらった銀行株を買い戻すかどうかちょっと注目しています。
1Qの記事で書きましたが(下記囲み)、バフェットさんはすでにこっそりブラジルの銀行株を買っています。
速報!バフェットさん、ブラジルのデジタル銀行に5億ドル投資!
これは2021年6月8日に発表されたので、おそらく2Q(もしくは3Q)の投資事業ということになりますが、バークシャーハサウェイがブラジルのデジタル決済銀行であるNubank(ヌーバンク?ヌー銀行?)に5億ドル投資したことが明らかになりました。顧客が4000万人もいるでかい銀行ですが、未上場のためバフェット銘柄一覧には出てこない可能性もあります。とはいえ、銀行系は減らす方針と思っていたら、意外な投資先ですね。(2021年6月8日)
CNBCニュースサイトはこちら
S&P500をわずかにアウトパフォーム!
最初に触れた通り、バフェット銘柄の評価額は4ヶ月余りで150億ドル超増えました。1Qのときは約300億ドル増でしたから、増加額は半分に鈍化したことになります。
とはいえ、半分って言っても日本円で1兆7000億円ですからね。それを4ヶ月で増やしてしまうバークシャー、そしてこの資産を長年築いてきたバフェットさんに畏敬の念を抱かずにはいられません。
そんなバフェット銘柄も、S&P500指数には3年連続、伸び率で敗北を喫しています。今年はどうなることやら。
最後にバークシャー(BRK、赤)とS&P500(SPX、青)の騰落率を比較した年初来チャートを載せておきます。
- トップ10銘柄に変化なし
- 4ヶ月余で評価額は150億ドル上昇
- セクター別比率で金融はがわずかに減少
- 「女性の健康」向け製薬銘柄を新規購入
- ヘルスケア・保険は売買活発化
- 食品小売ナンバー2の銘柄を買い増し
- 欧州の通信サービス事業に見切り?
- 伊藤忠はワンランクアップ
- 銀行株売却の嵐はやんだ(のか?)
- バークシャーがS&P500をわずかにリード
2020年1Q以降のバフェット銘柄一覧の記事一覧はこちら↓↓↓